第71話 ギルド見学3

ギルトの中は広く、今日は、見学があることを予め、告知していたため、冒険者たちの姿はない。

建物の中に入ると、大きな総合受付の看板があり、奥には、受付の女性たちが、座って、並んでいる。

ロザリーは、生徒たちに、説明。


「目の前にあるのが、受付だよ。冒険者たちがやり取りするとこだよ。任務の依頼内容を確認したり、それを受けたり、依頼内容はあの掲示板に貼られてる

やつ、わかるかい?」


そちらに注目がいく。いろんな紙が貼られていて、ロザリーは数枚を適当に、取って、子供たちに見せる。


「これは、薬草を採る任務だね。オトギリソウを10束、集めることが任務だよ。これは、ハーブ鳥の羽の採取、これはオークの討伐だね。」

「出来たらどうするの?」


「さっきの受付に言いにいくのさ。状態を見せて、完遂したら、あの隣に、金の受け取り口に行くんだ。見てみな。彼処の金の受付にいるやつは、勘定に厳しい、勢揃いの粒揃いさ。ここだけの話、冒険者もうちのギルドマスターも逆らえない位、金には厳しい奴等だよ。」


紹介された金の受付たちの目はキラリと光った。己の仕事に誇りを持っている。


「冒険者は荒れくれ者もいるからね。腕だけじゃなく、口でも負かすんだよ。」

「ロザリーも勝てない?」

リーサの疑問で笑う。

「ハハハ。どうだろうね!仕事に誇りを持つってことは、良いことさ。勉強をすることも遊ぶことも、一生懸命やんな。結果はどうであれ、やった事実は、必ず、自分を誇りになるよ!」

ロザリーは、紙を掲示板に張り付けた。


「アンタたちには、自分がしたいことを一生懸命しな。そして、選ぶんだ。自分が誇れるようにね!素敵な大人になるには、色んなことを体験しな!」


次々にあたしは、花屋になりたいの!とか、俺は、冒険者、僕は本屋さん等々、話す。キラキラと将来を話す生徒たちに、ロザリーは素敵な夢だねと絶賛。


「でー…ピクッ。」

ロザリーが止まる。

「??」

入り口から豪快に入ってきた見知らぬ冒険者たち一行。筋肉隆々な男たちと綺麗な女たち。

真ん中の男は、大剣を担いでる。

「みんな、悪いね。少し、避けて。」

道を避ける生徒たち。わあ。大きいと見上げる。

冒険者と関わらない生徒たちにしたら、冒険者を見るのは、稀である。


その一行は、直ぐ様、受付に向かう。

「大きい!」

「腕が太いね!」

「あのお姉さんも冒険者さん?」

キャっキャしながら、話す。

ロザリーはその一行を見つめていた。




ロザリーは気を取り直し、案内をしようと、振り向くと、背後にいた受付の方が騒がしい。

どうやら、揉めてるようで、受付に怒声を浴びせてる。しかも、なにやら、受付の人の襟元を掴んでる。固まる生徒たち。

「ちょっと待ってな。」

「ロザリー…。」

ロザリーが動いた。事情を聞きに行くロザリー。

「なんであんなに怒ってるの?」

「おトイレに間に合わないじゃない?」

「それは大変だね!おトイレ、何処かな?」

甘えん坊たちが話す呑気な話に回りも次第に軟化。

だが、どうも激昂してる一行のリーダーが、止めに入ったロザリーの襟元を掴む。

「ロザリー姉さま!!」

マリーウェザーが叫ぶ。

「…アンタたち、よく見てな!!人に横暴な態度を取り、人に乱暴を働いた結果をね!!」

張りのあるロザリーの声に、一同、目が離せなかった。



ロザリーは受付に向かって、事情を聞きに行った。

この一行は、C級の冒険者たちで、近々、B級に上がるだろうと言われてる有望株。

"勇敢なる王の牙"

「で?その"勇敢なる王の牙"の皆さんは、何をそんなに憤ってんだい?あと、マナから手を離しな。受付の襟元を掴むなんて、穏やかじゃないね。」

「ロザリー…。」

ばっと離した勇敢なる王の牙のリーダーは、ロザリーを睨む。傲慢が鼻をつくような顔つきだ。人を値踏みするような不躾な態度。

しかも仲間たちも同様に不躾にロザリーを睨んでる。

「俺らの昇格試験の査定がおりないって、どう言うことだ。」

「そうよ!アタシたち、B級の冒険者になるのに!このギルドは融通が利かないわね!」

「そうだぜ。他のとこは、すんなりいくぜ。」

「ですから、説明した通り…前のダンジョンの際の嫌疑がありまして、再調査が行われてるんです。ですから、昇格試験の見送りが決まったと告知しています!」

「なら、従うのが、道理じゃないか。」

ダンジョンの際の嫌疑とやらはわからないが、なにやら、嫌疑があるなら、それが晴れるまでは、昇格試験の見送りは妥当だ。告知もしてるなら、問題ない。

「だから、それが、おかしい。ダンジョンの件ではアイツが勝手に事故ったんだ。俺らは、戦って、彼処を通り抜けただけじゃないか。冒険者なら、あり得る事故だろ?」

「ですから、再調査が決まってるんです!覆りません。」

「なんでよ!」

「…ティルさんからの証言が上がったからですよ。」

「…!!」

明らかに動揺してる。

何だか、やましいのか。ロザリーはため息。たまにいるのだ。理不尽に受付に乱暴を働く奴等は。

だが、見逃すような真似をしないのが、ロザリーである。

マナにこんこんと説明され、でも、納得出来ないリーダーが、ロザリーに目をつけた。

「つーか、お前、誰だよ。」

「あたし?ここで解体部門で働いてる、ロザリーよ。」

「解体部門?ハッ。」

ピクッ。

「解体部門で働いてる女はお呼びじゃない。引っ込んでろ!!」

「そうよ。奥で肉でも解体してなさい。」

「血の匂いがこびりつくわ。」

「言えてる。キャハハ。」

マナは真っ青。

「早く失せろ!このデブ…!!」

ロザリーは、息を吸う。

「アンタたち、よく見てな!!人に乱暴な態度を取り、人に乱暴を働いた結果をね!!」

襟元を掴まれた腕を掴む。は?と男は睨むが、ロザリーは構わず、足に力を入れ、腕をフルスイング。

男を出口まで吹っ飛ばす。ちなみに男は巨体といっていい、ガッシリとした体躯で鍛えられた筋肉で覆われた男を出口まで吹っ飛ばしたのだ。唖然とする。

「あたしはデブじゃない!!!ちょっとぽっちゃりなだけよ!!!」

「ちょっ。アンタ、何をして!!」

魔法使いの女がロザリーに魔法をやる前に、女も軽々、次々に出口に吹っ飛ばす。

テメエとまたも筋肉隆々の男を出口まで、吹っ飛ばし、軽口を叩いた女までも、思い切り。

「解体部門をなめんじゃないよ!!!いいかい!!あんたらが捕ってきた魔物の肉や皮、核を捌くのは、あたしら、解体部門があってこそだよ!!受付を蔑ろにすんじゃないよ!あんたらの窓口なんだい!!任務の雑務をやってる、言わば、裏方のエキスパートだよ!!!」

のびてる男らに、怒鳴る。

「冒険者なら!!意味のない乱暴を働くんじゃない!!!子供の夢を破るんじゃないよ!!!」

ロザリー独壇場。

くるりと背後にいる子供たちに聞く。

「いいかい?アンタたち。どんな道を選ぼうが、自分が胸に誓えるような誇りに思える自分になんな!!そしてー。」

固唾を呑んで聞く生徒たち。

「誰かを護るような優しい心を育みな。」

パチンとウインクする。


「あー。ロザリー。何をしてるんです!!」

奥からギルドマスターと副マスターが出てきた。

「遅いじゃないですか。ギルドマスターなら、もっと早く来てくださいよ。」

ため息をつくロザリーの足元に、倒れてる人々。出入口は、グチャグチャ。

副マスターの絶叫とギルドマスターのあきれ顔。

生徒たちからの羨望の眼差し。

カオス。



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