第65話 図書室

学校にある図書室は、とても広く、歴史が深いため、年々、本が増加している。

何百年前からの古い本や最近、出版された本などもあり、本棚には、ビシッと、並ぶ。

寄贈された本もあり、絶版された本もあるようで、貴重な本もあるらしい。


あまりにも本が多く、管理体制に、司書の先生が、3人いる。

しかも優秀なことに、図書室にある本のタイトル、場所などを把握しているスペシャリスト。


コーナー毎に、本棚が区切られ、本棚の迷宮と言っても過言ではない。

学年問わず、本を読む者、勉強をするために来る者、一息するために来る者など、絶えず、人が多い。 


「ねーねー、あれ、取って。」

ノアは、司書の先生に取れない本を取って貰うためにお願いをした。

「これかな?」

「ありがとう。」

子供向けの冒険譚である絵本シリーズ。

大人気で、現在、14冊、刊行されている。

「兄様に読んでもらうんだ。」

夜、寝るときに、絵本を読んでもらうのが大好き。

弟のため、当番制で、ノアの兄たちは、絵本読みをしてるらしい。

そのまま、寝る事が多く、ノアの兄たちは、ノアを巡り、私闘を繰り返し、母親を怒らせた経緯がある。

週7ある一週間を2日間ずつ、分けて、残った1日は、両親と寝ている。


「ノア、見つかった?」

オリバーが声を掛けてきた。

彼の手には、巷のカフェ特集と書かれている雑誌だ。

「うん!ありがとう!借りる手続きする。」

手続きするために、窓口まで行って、サラサラと文字を書く。


「…?何だか、外が騒がしいね?」

「なんだろう。」

図書室の前の廊下は、普段は静かで、壁に掛けてある絵画には、魔法が仕掛けられていて、日によって、違う絵が、現れる。

廊下を照らす明かりは、等間隔に、ランプが設置されていて、明るい。

たまに、七色の光が出るときもある。


「七色の光が出たのかな?虹みたいで綺麗だから。」

「そうなのかな。ちょっと見てみよう。」


チラッ。


数名、生徒が集まっていて、騒然としていた。

誰かが先生を呼びに走り、誰かが、怪我をしたと言う。

その中心にいたのは、コビト。

彼の様子を見ていたルーシリアが険しい顔をしている。

「コビト?どうしたの?」

左手を抑えていて、とても痛そう。


「火傷?」

オリバーが状態を見て言う。

上級生が魔法で冷やしてくれているが、治療を早くしたほうが良いだろう。

火元がないのに、どこから?


呼ばれた先生がやってきて、取り敢えず、コビトは、保健室へ行く。


周りにいた生徒からの証言だと、コビトたちは、普通に歩いていた。

図書室に向かうために廊下を歩き、七色の光の話をしていたコビトがランプを指を指すと、突如、ランプが揺れて、火の玉のようなものが、コビトに向かって、落ちてゆき、コビトは、火傷をしてしまったらしい。

もちろん、ランプにそのような仕掛けはされていないし、見回りをする先生や用務員からも異常はなかったことは、報告されている。


ただ、後に、ランプを調べると、誰かの手により、細工されていた事が分かった。

誰がそのようなことをしたか、調査が入るそうだ。


幸いにコビトは、軽症の部類で、保険医の治療により、跡残りも、痛みもなく、完全治癒されたらしい。



「練習室以外で魔法を使ったからね?先生たちは、お怒りマンなんだよ。」


夕食に今日あったことを話す。

通達で、保護者も知ったが、いたずらだとしても、校則違反。


「そうね。授業以外で魔法の使用はご法度。練習室だけ、魔法の使用が許されているのに…。コビトも怖かったでしょう。」


「図書室の周りは、燃えるようなものは、遠ざけられていたはず。まさか、ランプに対して、魔法を掛けるなんて。」


「ルーシリアが怒ってた。コビトが宥めてたけど、多分、犯人探すって。」


「当分、図書室の利用は、出来ないんだ。調査が始まるから。」


「仕方ないけど、残念だね。」


サラトガは、本が好き。図書室は、学生時代、入り浸っていた。

本の虫。

家に無い本をよく探しては、読んでいた。

図書室での事件ではないが、その前に通じる廊下での事故。

早く、解決して欲しいものだ。



「見つかったら、良くて、停学、悪くて、退学じゃなくて?」


「そうだね。軽症とはいえ、火傷をした子が出てるし、もし、火事になっていたら、大事。あそこの場所は、端っこで、袋小路になってしまう。」


「ゴットリー先生がね!リーサにね!オフィーリアちゃんとジオルクを守るのよ?って、守護者ガーディアンみたいにさ。」


つまり、離れるのでは無いと言うこと。

甘えん坊四人が勝手な真似をする前に、任務といい、興味を引き付け、保護者役の子達の側から離れないようにした。


「任務ってやつだよ。」


「ゴットリー先生も考えたな。」


「シッ。リーサに聞こえる。」


早く、早期、解決が望まれる。


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