第63話 乱闘騒ぎ


「ぶええ。鼻に甘いやつが残ったあ。」


「そんなに香りが強いの?あたしにはわからなかったわ。…ブルームおじいさんとマリダおばあさんに怪我がなくて良かった。」


「ごめんね、みんな、ああ、かわいそうなことをしてしまった。」


夫婦は申し訳無さそうに謝る。

彼らのせいではない。

来客予定が無かったが、ドアが叩かれ、ノックも叩かれた。

最初は居留守を使う予定だったが、どうも、中にいることが、分かったようで、しつこく、玄関前に張り付き、声を大にして、叫ぶように脅してきたそうだ。


周りの家は少し離れてるとはいえ、やはり、放って置くわけにもいかず、出たが最後。

要らないと突っぱねても、強引に、話を勧めてきた。


「厄介な連中ね!脅すような真似をして!!良かったわ。暴力を振るわれてたら!警備隊にしばらくは、パトロール強化をお願いした方がいいわよ!なんなら、お母様に行って、うちで働いてる人たちにしばらく、守ってもらいましょう!」


うちには、屈強な男たちがいる。

腕っぷしは、保証する。



「ねー、あの魔石みたいなやつ、嫌な感じがしたよ。黒いもやもやみたいなのが出てた。」


「黒いもやもや?あの人たち、魔石持ってた?」


持っていたのは、カタログでは?と首をかしげる。


「体の中にあるんじゃない?アルミン、見たもん、嘘じゃないよ!」


「えー?魔石を食べちゃったてこと?」


「魔石って食べられるの?」


魔石は、普通に食べられない。


「アルミン様、そのように見えたのですか?」


リーサを監視していた一人が、言う。


「うん!嫌な感じだよ!見てると不安になっちゃう。あっちにやってって感じ。」


今、現場は、警備隊とギルドから派遣された冒険者達がやってきている。

あの二人は、相当暴れたため、手荒く、拘束させてもらった。


「クソがあ!!離しやがれ!!」


「黙れ、大人しくしろ!!」


「絶対、許せないからな!!あのガキども!!」


さっきの態度を豹変させ、罵詈雑言の上、暴れている。拘束されているから、あまり意味はない。

警備隊が来てるのだ。無理である。


目が血走りはじめ、口から、涎が出てきた彼らは、ブツブツ、何かを言い始めた。

「なんだ、こいつら、いきなり…。」

拘束具で縛り付けられてるにも関わらず、どこにそんな力が!?と思うほどの怪力と魔力を感じる。

「るあああ!!」

「!?応援を呼べ!!」

辺りは混沌し、乱闘騒ぎが起きた。



「お外、どうしたの?」

「フラン様、何でもございません。」

中で待機中の子どもたちに気取られないように、メイドたちは、気を逸らす。


「ブルームおじいちゃん、マリダおばあちゃん、リーサの鼻、曲がってない?」

「大丈夫だよ。まだ匂う?」

「お医者様に見てもらう?」

甘えだすリーサに、よしよしと頭を撫でる。


「一応、見て貰いなさいよ。もしかしたら、変なやつ。吸い込んだかもしれないし。…外が騒がしいわね。」

マリーウェザーは、外が気になるようだ。


窓からちらっと見えた。


大勢の人間があの二人を前に、拘束しようと格闘している。

しかも暴れた方が尋常ではない。

メイドたちが、守護魔法タリズマンを掛けた。こちらに被害が及ばないように。

あれは、何かしらの薬をやっている麻薬中毒者だ。

この国では麻薬は禁止されて、厳しく、取り締まられている。


「!!気をつけて!!そいつ、火爆弾を持ってるわ!!」


窓を開け放ち、叫ぶ。


火爆弾とは、札に呪文が、刻まれていて、火力が強い爆弾の札。

冒険者も持っている品ではあるが、主に、鉱山の石を取る際に用いられる品物。

安全性を確保しながら使用するものだ。


女がその火爆弾を投げかけた瞬間、デヴァイスが、止めた。


「手間取らせやがって!!マルクス様に叱られるのは、こっちなんだ、ボケ!!あー、ヤダヤダ、お嬢様ったら、変なやつを引っ掛けて!キーッ!」


デヴァイスがストレス発散が如く、暴れてる。それはもう、周りが静かになるぐらいに。



「なんか、ムカついてきたぞ?」


「リーサちゃん、お医者様を呼んだからね。寝ている?」


「あ!デヴァイスが暴れてる。」


呑気にパイを齧る子どもたち。



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