第62話 あれが噂の悪徳セールスマン?

玄関前でこの辺りでは、見られない顔がいる。

もちろん、それだけで、人を疑ってはいけない。

どうやら、二人組のようだ。


男女ペアで、男は大柄な体格をしていて、女は、小柄であり、清潔感が漂うような出で立ち。


近づくにつれ、話が聞こえてくる。


「これは、この魔石を設置するだけで、火力が高くなり、料理などの支度もスピーディーになりまして、外に設置致しますので、幅を取りません。」


カタログのようなものを二人に見せている。


通常、料理などに使用する代物は、今は、少なくなっている薪からやる竈や一般的に使用される魔石の屑を使用して使うコンロタイプ。


魔石の屑は、ギルドや素材屋等、至るところで、購入しやすく、安価で手に入る。


「ねーねー、何してるの?そのカタログ見せて?」


「ぼく、シェフに見せて貰ったことがあるけど、魔石の屑って、小さくて、形が、バラバラなんだよ?こんなに大きくて、使えるの?」


「一ヶ月使用料、10000エルってどうなの?やすいの?高い?」


わらわら、近づく。


「あ?なんだ、このガキ。」


「ちょっと君たち、あっちに行ってなさい。」


「…。」


シッシと追いやられる。フランとノアは、ガーンとショックを覚えた。

手を振られるなんて、あまりされたことない。


「リーサ?」


アルミンがリーサの様子に気づいた。


「くさい…。」


「え?何が?」


アルミンは、首をかしげた。


「その人達から、すごく甘いにおいがする。砂糖じゃない甘い感じ。でも、なんか、ちょっと違うやつ。お鼻が曲がっちゃう。」


リーサは困惑した。二人から異様に甘ったるしいにおいがする。

本能的に嗅いてはいけない気がする。

異変に気づいたメイドたちが子供を後ろにやり、合図を送った。


リーサを監視していた者が現れ、夫婦の前に立ち、中に入るように促す。


「いきなり、どこから!?」


「なんなの?あんた達!?」


「お嬢様、この二人からがします?」


デヴァイスがリーサに聞いた。

眉をひそめ、鼻をつまむリーサは、渋い顔で答える。


「ものすごい甘いにおいがする。砂糖じゃない甘いにおい。でも何か甘いものを煮詰めたような匂い…あ!ままが苦手な甘いチェリーの香水みたいな匂い。うう…匂いが強い。」


「失礼致しますよ。」


一時的に鼻を効かせない魔法を使い、リーサの鼻は無事。


「デヴァイスさん、ちょっと。」


「ん?」


耳打ちする。


「は??」


メイドと監視役で拘束されている二人は、罵詈雑言の嵐。


「薬…?」


「おそらく、巷で流れてきた新物の薬です。タブレットのやつで。これは、ちょっと大物案件です。」


「マジかよ~。」


これは、別のものを釣り上げたようだ。


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