第60話 作戦開始
大体、どこに誰が住んでいるのか、理解している。
有り難いことに、近所トラブルと縁が遠いほど、平和。
「あんたたち、何をしてるのよ?」
マリーウェザーは、四人の行動に気づいた。
正確には、何かをやらかす前に、気づいたジオルク達が甘えん坊たちを説得している場面だった。
「え?見回りをする?高齢者のお宅に?」
「そうだよ。悪徳セールスマンっていう奴を追い払うの。」
「追い払ったあと、どうするのよ。そういった奴らは、執念深いのよ?」
「んー、フランツおじちゃんにお願いをする。懲らしめてって。」
「フランツおじさまは、キングブレストから降りてこれないでしょう。警備隊に引き渡せばいいんじゃない?というか、フランのお父様が警備隊のトップなんだから。…あんたたち、それ、保護者に言ったの?」
「え?」
目を丸くする。
「リーサちゃん、だめだよ。遊びに行くならまだしも、犯人を捕まえようなんて。危ないんだから。」
「アルミン、リーサに付き合うことはないよ。」
「やめろって。マジで。フランのお父さんが暴れ出すぞ。」
「ノア、誘拐されるかもしれないから。」
ジオルク達が次々に言う。
仮に、現れたとして、そういった輩は、一人ではない。
蛆のように湧いてくるもの。
「婦人会の人達が、当番制で見回ると聞いたけど。んー、あんたたち、一回でも決めたら、やらないと、裏でコソコソ、やるよりはいいのかしら?んー、わかったわ。私もいるから、それならいいわよ。」
「マリー!!」
「あたしがいれば、大の大人一人なら、吹っ飛ばせるし、その間に、警備隊に連絡をするぐらいはできるでしょ。」
家庭的遺伝でもある怪力の強さに加え、日々、家の仕事を手伝っているマリーウェザーには、自然と筋肉がつきやすい。
「大丈夫よ。一回でもやれば、気が済むはずだわ。それにそんなあることではないんだから。」
「…。」
目を見合わせる。
「それに、フランやノアには、メイドたちがついてるのよ?キャサリンなんかに近づいたから、おじさまたちは、ピリピリしてると言うじゃない?なら、問題ないわ。リーサには、しばらく、リリーエおばあさまの命令で張り付いてる人がいるんだから。」
やらかして、人員が増加した。
リーサに至っては、いつまでいるの?とマルクスに聞いたらしく、リリーエの決めたことだからと宥めていた。
「まず、そんな中で、悪徳セールスマンが来てみなさいよ?蜂の巣に決まってるわ。あたしが手を出す前に、木っ端微塵よ。形が残ると良いと思うわ。」
妙に説得力がある。
「でもやろうとしてることは、悪いことじゃないわ。来ないほうがいいけど、それでも、何か、別のお手伝いができるかもしれないじゃない?ギルドに頼むことも出来ない人もいるんだから。ボランティアで出来るなら、それでいいのよ。」
普通は、ギルドに頼み、冒険者たちが、条件があったものから、任務にあたる。
例えば、高齢者で買い出しができない人のための家事代行等。
当たり前だが、お金はかかる。
他に子どもたちに駄賃をあげ、お手伝いなどの名目でやることもある。
婦人会や紳士会でも、ボランティアとして、やっているが、全体的に手が回らないこともあるため、中々、難しい。
「しょうがないわね。フィルおばさまたちには、あたしから言っておくわ。」
マリーウェザーもフィルたちから信頼が厚い。
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