第55話 家庭教師

「え?オフィーリアちゃん、家庭教師に習うの?いつ?」

一大事である。

リーサと遊ぶ日が少なくなってしまう。

由々しき事態。


「みっちり、やるんじゃないの。週2日程度でね。月の日と水の日に。2時間。」


「えー。」


この世界では、曜日は、月の日、火の日、水の日、木の日、金の日、土の日、陽の日と数えられる。


「フィルおば様には、私から、リーサちゃんに伝えるから待っててとお願いしたの。」


「学校でもお勉強してるのに?」


「リーサちゃんの家庭教師嫌いは、相変わらずね、大丈夫よ。空いてる日もあるからね。」


リーサの不満顔に、クスクス笑いながら、つんつん、頬をつつく。



「上の従兄弟達の家庭教師の日も邪魔をして、叱られたもんね。」


「リーサ、悪くないもん。でもおばちゃんがめって言う。」


気を引きたくて、家庭教師を雇っている上の従兄弟たちの邪魔をしたことがある。

意地悪をしたわけではない。

ただ、部屋に勝手に向かったり、教科書を隠したりした。

もちろん、フィルに叱られた。


「だって、リーサと遊んだほうが楽しいに決まってるもん。」


「リーサちゃんも興味のあるやつがあれば、習い事してみたらいいじゃない?」


「お勉強は、学校で、やるからいや。」


「なら、勉強じゃないやつは?」


「えー。」


勉強だけでなく、それこそ、歌や行儀見習い、絵等の美術関係など、様々。

ノアは、歌のレッスンを受けている。

週3日。ノアの体力を考えて、時間を調節してるそうだ。

フランは、まだ、決めてないようだが、母親がフランに合う先生を探してるらしい。


「リーサはお家で、まったりしてるの。」


「フィルおば様は、何か言わないの?おすすめはこれがあるよとか。ツェリおば様も言いそうだけど。」


「言わないよ。」


リーサが知らないだけで、話し合いがされているが、何分、相手は、リーサ。

やりたくないことは、テコでも動かない。

万一、うまくいったとして、先生と相性が良かったとして、リーサは、先生を無事に返すだろうか。


双子の習い事と同じ時間にぶつけて、やらせることも検討をしているが、何かを感じ取っているリーサは、フィルから益々、離れなくなった。

リーサを抱えたまま、家事をやることは、出来なくもないが、やはり、ここは、リーサのために動かねばならない。



「ベイビー、お勉強が嫌なら、絵を描く先生に教えてもらう?幸い、フレデリックおじ様の縁で、いい先生の紹介もしてくれるから。」

「フレデリックおじいちゃんが来るならいいよ!」

フレデリックとは、リリーエの妹の夫。

美術関係に詳しく、本人も絵描き。

温かい温もりを感じる絵が評価されている。

「ベイビー、フレデリックおじ様をちゃんと返せる?授業中に、ベッタリして、遊んでとせがまない?」

「何で?フレデリックおじいちゃんもリーサと遊びたいと思うよ?」

「ベイビー、家庭教師の先生は、遊びじゃないの。」

「絵ならフレデリックおじいちゃんじゃないとヤダ。行儀見習いは、おばあちゃんもヘレンおばちゃんもリーサに優しくしてくれたらいいよ!じゃなきゃ、ダメ。」

ノーだと言い、断固拒否。


「母さん、リーサには、まだちょっと家庭教師の話は早いよ。」


「あんまり乗り気じゃないし。スネたら、リーサは、長いしさ。」


「そうは言うけど、あなた達の家庭教師の時間になると、いつも、ベイビーは、気にして、この前なんか、先生が帰宅する時に、おねだりをして。」


もちろん、フィルはその場で、リーサを叱った。双子を教える家庭教師は、とても勤勉で穏やかであり、聞き上手。

リーサが気に入っても仕方ない相手である。




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