第54話 婦人会・紳士会
フィルが所属している婦人会は、地域の貢献のために入るコミュニティで、参加などは自由。年齢は、バラバラで、他愛もない話をしながら、世間話をしたり、次にやるボランディアの内容だったり、町のことで相談をする。
単純に婦人会・紳士会とは、性別のことだけを指していて、一緒くたのグループだ。
寄付金で作られた会館で、定期的に開かれる会議にフィルは参加をしていた。
小さい子を連れてきた親や孫を見てるんだと嬉しそうに話すご老人たち。
和気あいあいしている。
今回は、前から決まっていた孤児院に寄付をするタペストリーの刺繍をしにやって来ている。
「大掛かりな図面になるわね。」
手先が器用なメンバーが集結している。
他のメンバーは、また違うやつに取り組んでいて、炊き出しなどの話し合いをしている。
材料は、持ち寄ったり、寄付金の中から、出したりしてやることが多い。
「そうね、最低でも一ヶ月ぐらいは完成がかかると見てるわ。でも人数もこれだけいるし、なんとかなるのではないかと思うの。」
「折角なら、もっと色を使ったものも良いしね。」
「明るいほうが気持ちにもいいわね。」
「私、裁縫しながら、お喋り出来ないのよ。不機嫌とか、無視ではないから、気にしないでね。」
「あなたもそうなの?わたしもなの。一つのことに夢中だと、他のことが出来なくて。」
「え?本当?」
「料理中もそうで。子どもたちにもよく聞いてる?なんて言われるわ。」
「わかるわ。違うの。って言いたくなるわよね。」
お喋りがあちこちから聞こえる。
「甘えん坊さんは、大丈夫?学校には慣れた?」
「そうですね。担任の先生に随分、懐いていて。よく話してくれますわ。良い先生で。アルミンたちも、大好きでよく、纏わりついてると聞いていて、あまり邪魔しないように言ってるのだけど。」
「あらあら。甘えん坊たちらしいわね。」
おまじないの呪文を使うため、指先から魔力を流している。針に伝わり、糸に流れ、生地に縫い留めていく。
「この前なんか、ご存知でいらっしゃいます?女子トイレに出てくるガブリエルっていうゴーストを捕まえて、説教をするんだって言って。まあ、ベイビーの前に現れないらしいのだけど。」
「あら、まだいるのね。知ってるわ。」
「危ないから良しなさいと言ったのだけど、納得していなくて。」
世間話をしながら、針を進めていく。
誰かが用意してくれたお茶とお菓子をつまみながら、朗らな雰囲気で進む。
「リーサ、母さんがいないから、内緒だからな。ほら、ミニラーメン。証拠隠滅。」
体に悪いからとフィルが中々、買ってくれないおやつのミニラーメン。
留守番している下四人が隠していたミニラーメンを貪る。
フィルがいないときは、火を使ってはいけないと言われているが、スペンサーが、お湯を沸かして、ミニラーメンを作ってくれた。
「ありがとう。」
豚骨醤油ベースの味で美味しい。
「うめぇ。」
「母さんがいたら、咎められるからな。」
「たまには、ジャンキーなおやつが欲しいよな。」
母は、お菓子を作るのもお手のもの。
とても上手。でもたまには、ジャンキーなものも欲しいときがある。
「留守にしてるあの子達、何かしら、してると思いますわ。」
「あらあら。」
「私のカンでは、普段食べれないおやつを食べてるんではないかと踏んでるの。」
母のカンは当たる。
「ねぇ、フィル、いい家庭教師を知らない?」
「家庭教師?」
声を掛けてきたのは、リーサと同い年の子供を持つ母親だ。
「そうなの。ほら、まだ低学年だとお昼までだし、空いた時間で、何か、習わせようかと思っていて。」
「勉強方面?それとも運動方面?」
「んー、出来れば、勉強方面ね。復習させるのもやっぱり、親よりもうまく、指導してくれるのではないかなって。」
「そうね。家庭教師でおすすめなのはー。」
情報交換に良い場所でもある。
「過敏になりすぎてると言われたんだけど、知り合いのお子さんにね、家庭教師が親の目を盗んで、体罰をしていたらしいの。そこの子は、上にお兄さんがいるのだけど、頭のいい子でよく下の子と比べて、出来ないと、竹のような棒で叩いていたらしいの。幸い、跡が残るような傷ではなかったらしいんだけど、だからこそ、発見が遅れて。いくら、傷跡が残らなくても心に傷が出来たわけでしょう?親御さんは、物凄く、後悔していて。」
そんなことは、稀なことだと言われたが、でも、気になってしまう。
「まあ!なんて酷い!!どんな家庭教師の名前だったの?」
「えーと、確か、ベレタ・グレタだったかしら?変わった名前だったから、多分、そう。家庭教師レベルも高かったみたいで、信用していたのに、思想が偏っていたというか。」
「ベレタ・グレタ?…」
何かが引っ掛かる。
フィルは、取り敢えず、名前のリストをメモに連ねて、ギルドに行くと、良いとアドバイスを送った。
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