第51話 オフィーリア・ライデム

オフィーリアがリーサと出会ったのは、保育園の時だ。

初めて見た彼女は、保護者から引き離され、一日中、泣きじゃくっていた。

まあ彼女だけでなく、至るところで、引き離され、泣いてる子ばかりだったけど。


「ねえ。私、オフィーリア。お名前は何ていうの?一緒に遊ぼう?」


泣いてる彼女は、自分に気づいたように、顔を上げた。

泣き腫らした顔で、言葉が、出てこないようだ。

急いでいないから、ゆっくり、待った。

少しして、返ってきたのは、リーサだと呟いた。

それが初めてのやり取りだった。

おままごとで遊んだのだ。

とても楽しかった。



リーサと毎回、来る女性は、母親ではなく、叔母らしく、2つ上のクラスに通う従兄弟の母親らしい。リーサが毎回、泣きじゃくり、そんなに泣いては、体中の水が無くなると、心配をしていた。

そして、リーサが毎回、私を彼女に紹介した。

リーサから大分、話を聞いていたようで、握手してくれ、仲良くしてくれて、ありがとうと言われた。


クラスでは、リーサだけではなく、他の甘えん坊たちもいて、もれなく、親から引き離され、泣いていた。

だけど、慣れてくると、甘やかされてきた彼らの本領発揮。

一人、一人は、とてもいい子たち。

しかし、何分、甘えん坊気質は、抜けない。


リーサと従兄弟のアルミンは、動物に好かれやすい体質で、よく、部屋に動物が紛れ込み、お昼寝が大好きなフランとノアは、よく好きな場所で寝転がっていた。


家の事情で、少し遅れて、入ってきたジオルクはリーサと顔見知りだったようで、一緒にリーサと面倒を見てきた。


先生たちはフルで、子供の面倒を見ていた。加えて、甘えん坊たちがいるのだ。

大変だったろう。


ある日、オフィーリアは見た。


「こら!あなたたち、やめなさい!!先生たちのお話を聞く約束はどうしたの?ベイビー、わがままばかり言ったら、だめよ?アルミン、部屋に動物を入れてはいけないし、コルルに、飼いたいなんて言わないの!フランもノアと一緒に、兄を呼んでとは言わないの。あの子達はここに来れないのだから。…来ようとして、また大変なんだから。」

あんなに、聞き分けがよろしくなかった子たちが逆らわなかった。

でもさ、あのさと繰り返すあの子達をフィルは、叱りつけた。


「オフィーリアちゃん、ありがとう。もし、ベイビーたちが、困ったことをしたりしたら、遠慮なく言ってね。」


幸運なことに、フィルに気に入られた。

リーサが私はリーサのオフィーリアちゃんだから当然だと鼻高々に言う。


「あのね、あのね、リーサのお腹にね。ガルガンズがいるからね。オフィーリアちゃんのことを守るよ。」


「ガルガンズ?」


何の話かと思ったが、リーサ曰く、ドラゴンらしい。

リーサの体の中に、封印されたドラゴンで、リーサが頼めば、ガルガンズが力を貸してくれるらしい。


ある日、リーサは、突然、おばけがいると、先生たちに泣きついた。

先生たちは、リーサが何か、怖いものに敏感なだけだと思われた。

しかし、アルミンたちも、おばけがいると言った。


しびれを切らしたリーサがマルクスにおばけの話をした。

マルクスは姪のために動いた。

後にわかることだが、アレは、魔法省の特別監査部門・査問会の人間だ。

マルクスは、激怒したらしい。

リーサを監視するために派遣された人間で、リーサは、知らない人間から見られた恐怖から、マルクスやフランツにどれだけ、怖かったかを話したらしい。

ある日を境に、居なくなった。



「オフィーリアちゃん、泊まってて。」

「だめよ。ベイビー、この前、泊まって貰ったばかりでしょ。」

「えー!!」

リーサがオフィーリアの体に巻き付いている。いつものこと。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る