第48話 色々回ってみたよ3

修理屋を出て、丁度、お昼頃。


食堂を探す。


活気あふれる店構えで店内も賑やか。


メニューには、ズラッと書かれた札が、壁に飾られている。

ハキハキとした従業員のお姉さんが、素早く、客の対応をさばいている。


「んーと。」


壁に飾っているメニューの札をキョロキョロ。


「どうやら、ここは、冒険者御用達のお店らしいね。ボリューム満点かも。リーサ、メニュー表、貰う?」


「大丈夫。んー、カニクリームコロッケ…あ!オオシロ・サーモン丼!!」


オオシロ・サーモン丼は、サーモンの中でも大振りで、脂身が多く、オレンジ色の身とサシの入った綺麗な筋。

焼いても生でも旨いが、脂身が多いため、食べると、唇はテカテカになる。皮は剥がれているが、頭部付きのため、中々、食べる人を選ぶ。


「オオシロ・サーモン丼にする?」


「うん。あとコーラ。」


「じゃあ、んー、どうしようかな。このさば味噌定食にしようかな。すいません。」


サラトガが店員に注文をする。


テーブルに置いてあるお茶のポットには、香ばしい冷たいお茶が入っていた。グラスに注ぐ。


「あら?サラトガおじさんにリーサじゃない?」


声を掛けてきたのは、マリーウェザーの二番目の姉、デイジー。

マリーウェザーに瓜二つの顔に、長い金髪を後ろに三編みをしている。

若草色の清楚なワンピースを着ていて、隣には、デイジーのボーイフレンドが立っていた。

勝ち気そうな顔立ちとは、裏腹に、とても気のいい青年で、ヴィセントと言う。

相性は、ヴィンス。



「デイジー、ヴィンス。こんにちは。デート中だったのに声をかけてきて良かったの?」


「あら。私達の間にそんな遠慮はいらないわ。そして如何なる邪魔者も私達の敵じゃないもの。リーサ、ヴィンスの膝から、降りな。」


ヴィンセントの膝に乗ろうとして、呆気なく、席に戻される。

相席でもいいかと言われたので、大丈夫だと答えた。



「忙しくしてると聞いてるけど、大丈夫?」


「課題もそうだけど、実地が大変で、でもやり甲斐があるから、頑張れてる。」


デイジーやヴィンセントは、将来、獣医師になるための勉強をしている。

専門知識に加え、体力勝負な為、なり手も最近は減ってきて、大変らしい。

仮に獣医師になると、家畜を扱っている畜産農家の家畜の状態を見に行ったり、一般家庭のペット達の医療なんかにも携わるため、本格的に忙しくなる。


「はーっ。お腹すいたわ。注文しちゃいましょう。」


デイジーが、呪文かと思うほどの注文をする。



テーブルには、ぎっちり、料理が並ぶ。

リーサは、オオシロ・サーモンにかぶりつく。

口の周りは、油まみれ。テカテカ。


「ああ、メアリーのとこに行ったのね?あそこはうちもよく行くわ。壊したものを直してくれるからね。」


怪力で何でも壊しちゃう一家ならでは。


「メアリーには会ったの?可愛いらしい人形よね。怖さを感じないわ。でもあれ操ってるのは、あの店のオーナーなんでしょう?ヴィンスは見たことある?」


「ううん。噂だと、白髪のおじいさんとか、麗しい美男子だったとか、子供のような姿だったとか聞いたことはあるけど。」


「本人は恥ずかしがり屋で、人見知りなんだよ。普通な人だよ。」


リーサは会話を聞きながら、モクモクと想像する。



「リーサ、デザート半分個にしない?」


デイジーの提案に乗った。


生クリームたっぷり、フルーツもりもりのパフェをつつく。


途中でギブしたリーサを横目に、デイジーは平らげる。

甘いものは別腹である。

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