第37話 コハクの家


「いい?あちこち、触らないのよ?」


ツェツリーエは、注意喚起をする。


「知ってるー。」


元気に答える。


「サラトガの話を聞きなさい。工房で遊ばない。コハクのおじい様から何かを渡されたら、サラトガに見せなさい。いいわね?」


「うん!!」


「…。サラトガ、任せたわ。」


「任せて。」


サラトガは、手土産を包みながら、答える。



「ままも来れたら良かったのにね!コハクのおじいちゃんは、キラキラしたもの、いっぱい、持ってるからさ。」


「今度ね。いい?勝手に触らないのよ?壊れたら大変なんだから。思い出してみなさい。コハクのままがむせび泣いてるとこを。」


「…。」


んーと、コハクのままは、チェス盤が好きだったのを思い出す。

床に伏せて泣いていた。


「お土産にチェス盤をあげる!!」


「違うわ。」


何が違うの?




コハクの家は、工房と繋がっている家で、こだわりを見せている建物だ。

コハクの母親が熱弁していたけど、リーサには、ちょっとわからなかった。

真っ白な建物で、一見、工房と繋がっているように見えないお洒落な家だ。

階段を登ると、虹色の光が光る。

手すりは、植物のような蔦みたいな飾りが掘られている。

ノッカーは、鈴の形をしていて、かわいい。


ノッカーを叩くと、しばらくして、扉が開いた。

「いらっしゃーい。」

「あー。コハクだあ。」

ひしっ。挨拶のギュー。

「お邪魔します。これ、どうぞ。フィルが焼いてくれたクッキーです。」

「あらあら。ありがとう。入って。」

コハクの母親も来た。 フィル特製のクッキーを手渡す。


「コハクのまま、こんにちは。」

「はい。こんにちは。ちゃんと挨拶出来て、偉いわ。」

ふふん。鼻を高くする。


コハクの母親は元商人の経歴を持ち、コハクの祖父のファン。

綺麗な黒髪を束ねていて、常に、エプロンドレスを着ている。


次々にやって来る甘えん坊たち。

加えて、保護者たちも集まる。

責任重大の監視役だ。


「今日は絶対に目を離さない。」


一丸となる保護者。



「あれ?コハクのおじいちゃんは?」


「じいじはね、何かの会合?ってやつに行ってるよ!!でもね?じいじが好きに遊びなさいって。」


「待ちなさい!コハク!!工房には行かないのよ?工房は遊び場じゃあ、ありません!!」


必死なコハクの母親にふーんとうなずく。



「コハクのおもちゃで遊ぼう。」


コハクのおもちゃ箱がどーんと出された。



「待ちなさい?コハク。これはなに?見たことが無いのだけれど?」


「なーに?じいじがくれたの!!じいじがね?スッスッて、削ってたよ!!」


「ちょっと待って?これって精霊樹の木ではない…?」


「コハクのままも遊びたいの?一緒にやろうよ。」



精霊木とは、精霊の魔力を帯びた神聖な樹木。

精霊の森にあり、そこまで取りに行かないと、いけないが、とても奥深い森の中で、森を護るために、濃い霧が、常に覆っている。

森には、泉もあり、どんな怪我も治せるという不思議な泉が沸いてるらしい。


「どうして?普通のおもちゃ箱にぞんざいに入れてるの??ケースを!!」


「まま、それ、返して!!」


「エルモは何をして…いや、うん…。」

サラトガが同情の眼差しを送る。


木彫りされた精霊樹は、チャンバラごっこが出来るようにと対になる5つの剣の形をしている。

怪我をしないように、ご丁寧に、護符が貼られている。

あれ、妖精の力がついてないか?



「コハクのまま、あの剣がほしいの?」 


「もうひとつ、作って貰えばいいんじゃないの?」


「あ!見て、真ん中に石がついてるよ?色違い。何色がいい?」


「あー!本当だ!!綺麗ね。」


わちゃわちゃ。



「いやー!!この石、妖精の涙じゃない!!」


妖精の涙とは、本当に妖精の涙ではなく、妖精の涙のように美しく、煌めきが、美しく、一度、見ると、その石の虜に鳴ると言うほど、輝きを増す石である。

市場にそうそう、出回ることはなく、もし、市場に出たなら、コレクターの争いを生む。


「みんな、落ち着かせるものを。」

「準備は出来ています。」


保護者たち、出動。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る