第36話 コハク

コハクは、ドワーフと人間とのハーフ。

父親がドワーフで母親が人間。

無邪気な性格で、子供らしい感性を持つコハクは、姉二人と祖父母に溺愛されている。


ドワーフ特有のくりくりの目にぽってりお腹と背が小さいけれど、ドワーフならではの筋力を持つ腕。

そして、確かなる器用な腕。

ものづくりに特化したドワーフの特徴も受け継がれていて、ペンを持つよりも先に、トンカチを持つ。


コハクの祖父が有名な鍛冶師であり、最高峰の賞をいくつも受賞されてるほど、腕が確かで、未だに現役。


家に工房を持っており、弟子を育てている。

そんなコハクの祖父は孫に甘い。

特にコハクにとても甘い。

貴重な材料で作られたものをほいそれと渡し、価値を知らないコハクが玩具のように扱い、コハクの母親は絶叫した。

普通なら、一生、遊べるような価値の代物を子供の玩具にしたのだ。


そして、コハクと仲が良いのが、リーサ達だ。

忘れもしないあの日、良かれと思ったコハクの祖父は、子どもたちを工房に招いた。


ストッパー役は、もちろん、側にいた。

ただ、コハクの祖父は、リーサたちに、物珍しいものを見せてくれた。

大興奮するリーサたちに、気を良くしたコハクの祖父は、出してはいけないものを出してしまった。


そして、与えてしまった。

ミスリル超合金で作られたチェス盤。

細かい細工で、精巧な作りは、惚れ惚れする。

子供はチェスをあまりしない。

しないが、大人の遊びのやつだと認識したリーサたちは、思ってしまった。


自分たちは大人なのだと思った。

喜んだ子どもたちが何をしたか。

チェスのルールは知らない。

ただ、戦わせることは、知ってる。


そう。戦わせるのだ。

小さな手で駒を握ったリーサたちは、ガツンガツンと駒同士をぶつけた。

コハクの母親が絶叫した。


やめてーとチェス盤を守るコハクの母親の姿に驚いた子どもたちは、キョロキョロし、近くにあったものを手掴みし、コハクの母に渡した。


それは、コハクの祖父が、管理不足が否めない管理方法だった箱に入っていた氷玉銀と言う物で凄く珍しく、温度調節が厳しく、温かい場所で管理してると直ぐに溶ける。

人の体温で直ぐに溶けてしまう。


扱いに難しいものだ。

それを手掴みしてしまった。

湯気が放たれ、驚いたリーサたちは、手を離してしまった。

氷玉銀は、熱にも弱いが、衝撃にも弱い。

パリーンと割れた。


「あ…!」

チェス盤と交換して欲しかった子どもたちの浅知恵の結果は、大惨事を呼んだ。

コハクの祖父だけが、笑って、ほれ、こっちにもあるからと言ったが、コハクの母親は咽び泣いていた。




コハクの家に行くことになっている。

大惨事を回避するために、保護者は、注意深くしなければいけない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る