第35話 イート・ユア・マーケット



生活に欠かせない魔法があり、体内に魔力を持っている時点で、食事する量は、多く、一般人であっても、大皿を一人でぺろりと平らげる位で、常に、魔法を使うような環境にいれば、一人当たり、その食事量は、炭水化物とカロリー増し増し…糖分増し増しの恐ろしい量となる。



魔力とともに、食事をした分の摂取量が、とても大事。


故に、食事は、大事とされ、食文化は、全体的に、発展しており、一般家庭や店などでも、味に重視されている。



そして、このイート・ユア・マーケットは、新鮮な食材が揃い、活気あふれる市場。

四方に約72ヘクタール分の面積があり、食料の宝庫となっている。


下手したら、1日、丸つぶれになるほど、広く、行ったことない店もちらほら。

人通りも多いため、トラブル回避の頭上に、飼い慣らされたアラン・バードと言う鳥たちが巡回している。


窃盗や喧嘩、トラブルが起きた際に、けたたましく、鳴き、パトロール隊に、報告する。

真っ白な体でペリカンのような図体をしている。



けたたましく鳴くと、しばらく、やまないため、非常にうるさいのが、難点。

ある窃盗犯が、アラン・バードに見つかり、通報され、腹を立てて、魔法を放った。


当てられた腹いせに、仲間をおびき寄せ、全員で、共鳴し合う。

非常に鼓膜にくる。

音の威力の暴力だ。

周囲にいた人々が、一丸となって、アラン・バードを宥めた。



兎にも角にも、食材の宝庫である、この場所は、見てるだけでも楽しい。

屋台なども出ていて、お腹がなりそう。

あ!あれは、甘辛団子…!!

「ふう。ここに来たら、戦争よ。」

キリッ。フィルは、ハンターのような目で、食材確保に挑む。

数々の誘惑に負けないように努めて。

「…。」

小さな野獣が屋台を見てるが、手を離さない。

ここに来るたびに、言いつけられてるのは、フィルから絶対に離れないこと、手を離さないこと、あれこれ、買ってと強請らないこと。

香ばしい匂いを漂わせるトウモコロシの屋台を振り切って、進む。




いつものお肉屋さんに来た。

肉屋だけでもかなりの店が連なっていて、客の奪い合いになっている。

陳列している肉の大きさはとても大きく、下手したら、リーサより、大きいかもしれない。


「フィル…!!いらっしゃい!!寄っててくれ!!良い豚が入荷したんだ。見てくれ。良い色だろ?このピンク色。肉厚で柔らかいんだ!煮ても焼いても旨いぜ!!」

ドーンと視界に映る暴力的までな大きさの豚の塊。

ピンク色で新鮮そうだ。筋張ってなさそう。

店主が柔らかさを強調するために、フォークのような長い柄で軽く、刺している。


「そうね。」

ちらっと、他の品も吟味。

主婦たるもの、いいものを見逃すわけにはいかない。

「いくらなの?」

「これはー。」

リーサはキョロキョロ見ている。

あ!あれは!

ソーセージ!!

もう、肉をはち切れんばかりに縛っている糸がギリギリ保っていそうなぶりんぶりんのソーセージ。

あれは、生でも食べれるし、焼いてもうまい。

「そうね。じゃあ、それと…これは?」

「流石…お目が高い!!これはなー。」

フィルが店主と話してるのに夢中なとこ、リーサは、ソーセージに夢中。

「ベイビー、ソーセージは、まだ家にあるからいらないわ。」

ガーン!!!



マジッグバッグを持参している。

容量はそれぞれであるが、生活に欠かせない食料調達のために使用される特化型食料袋は、重さを感じさせず、ある程度の量が入れ放題で、時間経過もあまりしない。


さきほど、購入した食料を入れる。

見た目は麻袋だが、丈夫で、滅多に壊れない。

これは、食料以外は、入れられないのが、特徴でもある。食料以外を入れようとすると、袋の底から、物が落ちる。



他の肉屋も品定め。

「おー!!!フィル!!見てってくれよ!!このチキンの大きさ…!!グリルにしてもうまいぜ!ほれ、リーサ、口を開けな!!」

口を開けると放り込まれる肉。

パサパサしてない!!鶏肉のジューシさが口に広がる。

もぐもぐ。

「美味しい…!!」

「もう!子供に、試食させるのだから!!」

文句を言いつつ、それは、違反でもなんでもない。戦略である。それはわかってるから、笑っている。


この辺りでは、親子連れなど、子連れは、まず、子供に、試食させ、親に買わせる手法が当たり前。

「大人にはビールで飲みながら、この鶏肉を食うと絶品だ。ほれ、リーサ、これも食いな。」  

「あー!!」

「コラッ。」

口の中に入れば、こちらのものだ。




香辛料の店が近くなると、その香りが辺りを漂わす。

赤や黄色、茶色など、多種多様のスパイスが、箱に収まっていて、カラフルに見える。

「調合をお願いしてもいいかしら?カレーのスパイスがほしいの。甘口にしてくれる?」

店員が、袋を用意し、スプーンで、さっさと手慣れた様子で入れていく。



「これは?見たことがないスパイスね?」

「それは、魚料理に適してるスパイスで、ちょっとクセがあるので、好き嫌いがわかれてしまいますが、好きな人は、好きなスパイスですね。お試しに少しだけ、どうですか?」

「辛いの?」

「辛くはないです。」

フィルが話してる横で、足元に来た猫に気づいた。このマーケットには、野良猫がたくさんいるが、皆、マーケットの人々といい距離感を保って、共存してるため、ギスギスしたような猫は見受けられない。

撫でる。 遠くに母猫が子猫の様子を伺っていた。



ここに来たら、ちょっと秘密のフィルとリーサの秘密タイムがある。

買い物を終わらせたら、休憩は大事。

お気に入りの小さなお店で、二人で、大きなトロピカルジュースを2つ分のストローをさして、飲む。

甘いデザートを食べて一息するのだ。

みんなにはちょっと内緒である。






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