第34話 憐れな盗賊


巷で、世間を賑わす盗賊団。

金持ちから、金品を奪う様は、豪快で鮮やかな手口。


「よし…ここが…。」


今夜狙いに行く家は、ロッシュヴォーク。

ドラゴンを従える一族で、他の家から、一目置かれている家だが、盗賊にとったら、良い格好の的。


しかも、調査では中々の宝が、眠ってると言う。

セキュリティもしっかりしていて、これは、一介の盗賊相手ならば、無理だ。

しかし、俺らは、一流。 問題ない。



アニマは気づいた。侵入者だと。

既に、優秀なペットたちが闇世の中、盗賊を囲んでることに気づかずに。

アルミンは陽気に、自分の上に乗り、ご機嫌である。


アルミンを泣かすわけにはいかない。

侵入者は排除せねばならない。




ズシッ…ズシッ


「…?今、何が音がしたか?」


「いや?」


収納バッグに、目ぼしい宝を放り込む盗賊たち。


流石、名家。

売ればいくらになるか…

ヨダレが出るぜ。

こんなものを、無作法に、置いとくなんて。




「ん?んー?」

何だか、下がうるさい。

ソロリ…。

「…だーれ?お客さん?」



盗賊は、急に現れたドラゴンに硬直。

息も出来ないほどの圧迫感。

ずしりと重い空気に伸し掛かってるように。



「あれ?鬼ごっこ?アルミン!!鬼ごっこ、得意だよ!!エドガーが褒めてくれるもん。」


キャッキャするアルミンは、アニマにこう伝えたる。

『アニマ、追いかけて。』

ニコニコ。

地獄の始まりである。




いやいや…!!おかしいだろ!!

何だよ!?あれ!?

ふざけんなよ!!


咄嗟にマジックアイテム・緊急用目隠し爆弾を使用し、すぐに退散。

仲間も急いで、気を取り直して、脱出を図る。



背後から来るやつの足音…!!!

ズシッ…ギシッ…

夜中に響き渡る足音と悲鳴に小さい子供の笑い声。

ホラー並みの恐怖。

ドラゴンに乗る男の子が夢中に笑いながら、盗賊を追いかける様は、中々、シュール。

機会を伺いながら、今か今かと、狙うペット達。




陰が動いた気配。

「…!!!」

仲間の一人の前に影のような物体が覆いかぶさる。ダンッ。

床に引き倒された。

「なんだ!?」


グルルル…


ブラックドッグだ。牙を剥き、威嚇しながら、仲間の肩に食らいついている。

「ぎぃややあ。」

うるさいとばかりに、前足で、頭を抑えられる。


ガンッ。後頭部に衝撃が来た。

鋭利な刀で頭を刺されたような感覚。

振り向くと、鷹…?いや、違う…あれは…

鷹の魔物の一種…

フークン・サージ

普通の鷹よりも大きく、羽を広げたら、通常より、3倍大きい。

嘴も鋭利でゴツく、あれで、突かれたら、鈍器で叩かれたように、穴があいてしまうかもしれない。



次々と正体不明の魔物に襲われる仲間たち。



「なんの騒ぎだ。…アビー、よしなさい。そんなものを食べて、腹を下すぞ…アニマ…?…アルミン!!何をしてる?」

「お客さんと鬼ごっこ!!」

「アルミン、よく見なさい。いつもよく見るように言ってる。これは、お客さんじゃない。泥棒だ。」

「んー?泥棒…?」

「降りてきなさい。お説教だ。」

「えー!?いやあ。」




アルミン宅に盗賊が入ったことを知らされた。

驚きと共に新たな驚愕で、慄くフィル。 

「ベイビー!!いらっしゃい!!」

「なーに?」

「あのね?お客様と泥棒の違いは…!」

アルミンとリーサは、よく、似ている。

客と泥棒を間違えられたらマズイ。



ちなみに、盗賊が、盗んだ盗品は、きちんと返された。




「ロッシュヴォーク家の物を盗んだりしたら、大変なことになるのに…飽きないな。」


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