第29話 キャサリン・マガーの悲劇3


「え?ベイビーがキャサリンのところに…?」


万年筆を置いて確認する。部下からの報告に頭をフル回転。


「はー!?何をやって…このクソ忙しい時に…!!空気を読んで頂けませんかね…!!」


デヴァイスは、何だか、言ってるけれど、緊急事態。


「まさか…!ベイビーを人質に…?あり得るかも…昔から何かと姑息で陰湿な部分はあったから…抗議文では飽き足らず…。」


「いやいや、マルクス様。おそらく、リーサ様から、キャサリン・マガーの元に行ったと思われます。てゆーか、十中八九、そうです!!…はあ?他の子どもたちとも一緒…うぇ…最悪…ちょい、使いを出せ…。」


デヴァイスは、部下とやり取りしてるが、マルクスは、筆を降ろし、キャサリンの元に向かう。


「ちょっ…お待ちを…マルクス様、これから大事な取引が…!!」


「緊急事態だからね。後でお詫びをするよ。取引先は、幸いにもトゥルーズ家だからね。わかってくれる。今は、あの女狐をわからせてやらないとね。」


「ぎゃー、やめて!!止まって!!マルクス様ー!!」


甲高い悲鳴を上げるデヴァイスを振り払い、外出する。





「今なんと言った?」


男らしい眉をひそめ、使用人からの発言に、廊下を歩いていた歩みをとめる。


武芸で鍛え抜かれた屈強な体をしていて、腰には、父から譲り受けた剣を携える男は、フランの実兄で、長男にあたるテオドールが聞き返す。


「フラン様がキャサリン・マガーの元に行かれたとのご報告が…。」


「何故…フランは、キャサリンのことは、知らないはず…リーサか?…いや…もしかしたら、あの女、私のフランをゆすったのでは…?護衛はどうしてる…!アンネを呼べ。」


ザッと踵を返し、弟奪還のために、動く。




「は?ノアがなんだって?」


ガシャーン。高価なティーカップが割れた音が響く。

さっきまで、優雅にティータイムに勤しんでいたが、愛しい末弟が、あのキャサリン・マガーの元へいると報告が来た。


「メイドや護衛はどうしてる…!?…リーサがいる?あのバカ…!!うちのノアをまた巻き込んだな!…いや、それよりも、アレから、かわいいノアを奪還せねば。」


ギリギリと唇を噛みしめる彼は、ノアの三人の兄の中の長男でチェザーレという。


普段は、女性が好みそうな甘やかな顔立ちで、雰囲気も柔らかめだが、事、ノアに関することは、許容量が著しく、狭い。

苛ついた足取りで、キャサリンの元に向かう。




「なんて言った?アルミンがリーサと一緒にキャサリンの元に行った?…」


ギルベルトは、頭を抱えた。


なぜ、そんな真似をした?いや、わかる。リーサがフランツの記事を目にして、怒らないわけがない。



そして何よりもアルミンたちを引き連れている。想像できる最悪の事態は、マルクス、フラン・ノアの兄たちの怒りの矛先が、キャサリンの元に向かう。


いや、キャサリンがどうなろうか、知ったことではない。

問題なのは、止めれる人間が、側にいないこと。


マルクスは、フランツを侮辱したことに、酷く、怒っていた矢先に、リーサが、キャサリンの元にいる。


いや、キャサリンの元に自発的に行ったのだと予想は出来るが、マルクスは、おそらく、誘拐したと誤解してるはず。


「とりあえず、うちのアルミンを連れ戻す。」

アルミンを連れ戻し、事を収集せねば。






「うぇぇん…!!」


フランが泣いてしまった。

見知らない人間に抱き上げられ、恐怖を感じてしまった。


「フラン…!!泣かないで!!やい!フランを泣かせるなんてひどい!」

「…何だか、騒がしいよ?」

「…お兄様…?」

カオスな現場に轟く足音。





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