第28話 キャサリン・マガーの悲劇2

リーサは、スペンサーから、追跡型てんとう虫バッジと言う開発グッズを貰った。

スペンサーは、友人と共に、開発チームを組んでいて、何かしら、作っている。

両親に怒られようが、兄たちに叱責されようが、探究心は止められない。

失敗も多いが、成功品もある。

追跡型てんとう虫バッジは、成功例の1つ。

「いいか?リーサ、これはな。このボタンを押すと、起動するんだ。リーサには、ちょっと難しいから、やり方だけ、教えるな。これをどこかにつけて、手元のこれで、ポチッとやると、ほら、光がチカチカしてるだろ?つけたこのてんとう虫バッジから受信した魔力をこのてんとう虫の受け取り機で、受け取ると、正確な位置情報を知らせてくれる。」

「おー!」

「これはな、人でも物体でも、このてんとう虫バッジさえ、つけてれば、位置情報がわかるってわけ。だから、失せ物探しにピッタリ!」

「スペンサーの部屋の中でも探せるね!」

スペンサーの部屋は魔境と化している。腐海と言うべきか。

何度も両親や兄弟からの苦言に、掃除を試みるが無理である。スペンサーに向いてない。

いつも、サラトガが手伝っている。

そして、叱られたら、サラトガの背後に回る。

サラトガはスペンサーに甘い。



「よし!わかったぞ!ここがアジトね!」

「んー、どこら辺…?」

「あっ、ここあそこの近くだよ!文房具屋さんの通り沿いじゃない?」

「ちょっと遠いね!どうしよ?馬車を借りる?」

四人がコソコソ話している。




「編集長…大変です…。」

「はぁ?」

散り散りになって情報収集に勤しんでいる部下を除いて、デスクで、仕事をやっていた部下から、報告が上がった。

どうやら、あの子どもたちが乗り込んできたと。

「遊び場じゃないの。追い出しなさいよ。」

神聖なこの職場に手垢一杯の子供を入れるなんて無理。

「いやもう…それが…。」

「ふーん?ここが執務室ってやつね!おじちゃんのお部屋と違う。」

「ねぇ、見て?この写真、マックレガーだよ。俳優さんだよ。んー…?」

「あ!万年筆だぁ。お父様の部屋で見たことがあるよ!」

「小さいお部屋ね。…あ!リーサ、見て!この文字…フランツおじさまの事を書いてるよ!あー!酷い、悪魔って書いてある!」

「え!?」

いきなり現れた子どもたちは、蜘蛛の子を散らすように部屋に来て、捜索し始める。

「ちょっ!ガキども、何して…。」

「フランツおじちゃんの悪口を書いたな!許さないぞ!!でも…!!リーサは優しいから!!今日は、お話をしにきたの!!」

「帰れ!あ!触るんじゃない!大事な原稿に!」

「きゃー!!」

フランが部下に捕まり、勝手に触られたことにひどく、驚いている。

「フランを離して!!」

ノアとアルミンがポコポコ、叩く。

すると、いつの間にいたのか、ノアとアルミンも抱えられ、羽交い締め。

「あ!」

「魔法を使わないでやったんだから、むしろ、感謝してほしいわ。勝手にズカズカと入り込んで…!親の教育は悪かったみたいね!」

ピクッ。

言ってはならないことは、世の中に、いくつもある。

しかも、それをリーサたちに言ってはならなかった。

「今、なんて言った?」

ゴゴゴ…!!



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