第25話 フェイク
朝からとても不愉快。
マルクスは、契約している新聞を毎朝、読んでいるのだが、毎回、何もしてなくとも、挟み込まれている新聞…いや。新聞と言ったら、おこがましい。
ゴシップ記事だ。本当にくだらない記事ばかりを書く。
事実なこともあるが、事実無根のほら話をよく書いては、裁判沙汰になっている。
しかし、見下げた根性があり、張り付くと、やたらと粘着質。
有名人や政治家、名家の人間など、多岐に渡る人物のあらぬことを書いては、逆鱗に触れるような真似をしている。
燃やしても構わない代物だが、何となく、開いた。
見開きページに、写った記事を見る。
「お兄様?どうなさったの?体調が悪いの?」
朝ごはんの手を止めるマルクスに気づいたツェツリーエは、心配そうに見る。
リーサも手を止めた。
「お医者様、呼ぶ?」
「大丈夫だよ。ベイビー。ツェリもありがとう。…実はね。これを見て。」
新聞を渡されたツェツリーエは、新聞に目を通す。
眉を顰めた。
「…何?これ?」
「なーに?なんて?書いてあったの?見せて。」
「リーサ、立ち上がらない。お行儀が悪いよ。」
サラトガから注意が飛ぶ。
「…キャサリンね?あの女、ナメた真似をしてくれたわ。」
「キャサリン?キャサリンって誰?」
「キャサリン・マガーだよ。ゴシップ記者。あること、ないことを書くような記者で、大体は、煙たがられているけど…。」
「あの女…!フランツお兄様と同級生だったことも許せないというのに…!」
「ツェリ、それ、僕にも見せて?」
サラトガに新聞を渡す。
「…あぁ。もう、なんてことを…命知らずな。」
リーサはこっそりと席から降りて、サラトガの近くに寄る。
文字はまだ難しい部分が書いてあり、読みづらいが、写真はわかる。
フランツだ。
「…何で、フランツおじちゃんの写真がこんなに小さいの?」
「そこじゃないよ。リーサ。」
「…んーと…え?」
見出しに、❝キングブレストの誇る監獄・看守長フランツ閣下の豪快な振る舞い❞
要するに、フランツは、キングブレストで、看守長を務めている。
歴代最強と謳われるフランツの指揮のもと、過酷な訓練を受け、育った部下は、まるで、要塞を護るガーディアンの如く…うんたらかんたら。
逃げ出すものには、制裁を。
睨まれたらおしまい、捕まれば、フランツの制裁が待っている…恐ろしや。
「…この書いたやつはどこにいるの!?リーサが、やっつけてやる!!!」
「キャサリン・マガー…やっぱりね!ああいったのには、手加減なんてしなくても構わないの!撃ち殺してやるわ。えぇ…!」
「物騒なことを言わないの!ベイビー、お席に座りなさい。」
「でも…。ぶぅ。」
フィルに注意され、渋々。
「ツェリ、ベイビーが真似をするでしょう。やめなさい。」
「あら!私は悪くないわ。」
「フィル様、致し方ありませんよ。ツェリ様ですから。フランツ様のためなら、キャサリン・マガーぐらい、いとも簡単に、消し炭にされますよ。」
「…。」
デヴァイスが現れた。
「呼んでないわ。何来てるのよ。不愉快だわ。」
「あー…!出た。デヴァイスいじめは、よくありませんよ。おはようございます。皆様。デヴァイス、マルクス様からの要望により、馳せ参じました。」
「デヴァイス、よく来てくれたね。」
「デヴァイス、朝ごはんはいる?簡単なものしか、ないけれど。」
「ありがとうございます。いただきます。」
しれっと、朝食の席につく。
「あまりにも不愉快な記事を書かれたからね。抗議文も送るつもりではあるけれど。デヴァイスに動いてもらおうと思って。」
「既に、デニエル様が、送られています。」
「あら、そうなの?なら、デヴァイス、仕留めてきなさい。」
「ツェリ、よしなさい。フランツ自体が気にしてるかしら?」
「フランツ自体は、気にしてないように思うよ。鬱陶しくはあるだろうけど。」
「あの子はとても優しい子だからね。見逃してあげてるのかも。同級生だったからね。」
「たまたま、同じ学年だったというだけだわ!忘れもしない!あの女、フランツお兄様に迷惑をかけてばかり…!」
「ふーむ。キャサリン・マガーって言うのね?」
リーサの発した言葉に、誰も気づかなかった。
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