第23話 フィルの悪夢5
リーサがオスカーに誘拐されたことは、瞬く間に世間に広まった。
激震が広まっていく。
「嘘でしょう?リーサを誘拐したの?」
「なんて命知らずな…!」
「うちの子たちをしばらく、外に出すな。」
「護衛を増やせ!」
連れ戻されたリーサを出迎える。
リーサは、大泣きしており、まぶたは腫れて、悲惨。
フィルが念入りに浄化魔法を掛けまくったが、酒とタバコの匂いは、消えているが、フィルの気が収まらない。
「ベイビー、ごめんなさいね。一緒にお風呂入りましょう?穢されてしまった体をきれいにしましょう。」
「…。」
されるがままに、風呂に連れて行かれる。
「まずいわ。サラトガ。お母様たちがこっちに来るって。お母様が直々に、あのバカに説教するって息巻いてるの。」
「…オスカーは、ちゃんと大人しくしてるかな。」
「さあ。多分…。お兄様がやってらっしゃるし…アレも馬鹿じゃないから…流石に…。」
「…ずっ。オスカーのバカぁ…お説教してやるんだぁ…。」
「バカ。バカ。近づいたら、また何されるか…!」
プライドを傷つけられたリーサの言葉に双子は、慌てる。
「ベイビー、めっ!近づいては!…任せて。私がきっちり、オスカーにわからせるわ。」
「ひっ。」
母の姿に、双子は、悲鳴をあげる。
「マルクス?オスカーに会わせてくれるわね?」
「フィル…。」
「私からベイビーを奪ったのよ…!あんな小さい子をあんな酒とタバコの入り混じった最悪な環境に平気でいさせて…あまつさえ…!賭け事をさせるなんて!!黙ってるわけにはいかないわ…!」
こんなに怒りで震えるなんて、久しぶりだ。
フィルの嘆きにリリーエの怒りは、頂点に達した。
「あの子は何をしてますの!!私のフィルを傷つけ、リーサを誘拐するなどと…!そこまで、馬鹿だと思いませんでしたわ…!いい?絶対に逃してはいけませんわ。あの子は、逃げ足だけは、昔から、早いのですから!」
「リリーエ様、デニエル様は、オスカーに近寄ってはいけないと…。」
「お黙りなさい。緊急事態ですわ。デニエルがいい顔をしないことはわかっています。でも、やらねばいけませんの!!さあ!早く、馬車を出して!」
命令して、オスカーの元に行く。
「なんてことをしてくれたのよ。このバカ。」
認識阻害の魔法をガチガチに装備して現れたツェツリーエの前には、拘束されているオスカーがいた。
拘束されてるにもかかわらず、堪えてない姿を見ると、呆れるやら、何やら。
「よく、マルクスが許したな?」
「お兄様にバレるわけにはいかないのよ。フィルは、ずっと責めているし。お母様は怒り狂ってらっしゃるし。リーサがあの連中に何かされていたら、どうしてくれるの。」
「そんな度胸も無い奴らだ。リーサが誰の子かも知らねぇ、余所から来た流れ者さ。四天王と成り代わろうとした三下の新参者。」
「あなた、馬鹿じゃないの?そんなこと、リーサと何も関係ないわ。単純にあの子の運の良さ、目当てと言われたほうが、まだ説得力あるわ。」
「あいつの運の良さでいい稼ぎになった。」
「身包み剥がされても良い身分ね…と言いたいところではあるけれど、あなたのことだから、隠し持ってるのね?呆れた。いえ…それよりもよ。リーサに下手な嘘をついたわね。」
リーサは、この頃、お手伝いをしたいとねだっていた。
それに、マルクスが仕事に奪われる事に快く思っていない。
「あなた、何を探ってるの?リーサを使わないで頂戴。不愉快だわ。それこそ、あなたはネクロマンサーなんだから。自由に動かすスケルトンでも何でも使いなさいよ。」
「スケルトンでは、賭け事は出来ねぇからな。…喋り倒したら、喉が渇いたな。酒をくれ。」
「死になさい。」
ツェツリーエは、指を向け、つけていたリングが光る。
瞬時に、閃光が放たれ、オスカーの身体に、浴びせる。
「ふん。」
ツェツリーエは、サラトガが淹れてくれたお茶を飲みながら、ざわついてる周囲の声を受け流した。
「オスカーが逃げたらしい。」
「はあ?おばあさまの説教を受けておきながら?しかも父さんの尋問も受けてたのに?」
「あっちに行くな。ピリピリしてる。リーサは部屋にいるか?」
「閉じ込めてる。でもまあ、いつまで保つか…痺れ切らしたら、面倒だ。」
「双子とスペンサーの力量に賭けよう。」
サラトガが目の前に座る。
「オスカーが逃げたみたい。まあ。今回はまだリリーエ先生が来るのを待っていたから、進歩かな?他の家から連絡が絶えない。詳細が知りたいみたいだ。オスカーがまさか、リーサを誘拐するとは思ってなかったみたいだからね。特にフランとノアの家族がね。安全のために、しばらくは、外出させないって。」
「無理もないわ。お兄様もピリピリなされて…あのバカのせいで、お兄様は、対応で、忙しくなられて…。野垂れ死ねばいいわ。」
はめてるリングを擦った。
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