第21話 フィルの悪夢3

リーサは、先日、4歳の誕生日を迎えたばかりだった。

周囲に、4才になったから、大人になったと、子供らしい発言をし、自慢していた。

そんなリーサが今、座っているのは、秘密の賭場クラブの店の賭けの席である。

鼻の良いリーサは、入店してから、すぐに鼻をやられた。

酒と煙草が充満した室内。



「くさい!」

「あ?」


リーサが文句を垂れたので、魔法で、一時的に、リーサの鼻を効かせないようにかけられた。おかげで何も匂わない。


「オスカー、ほんとう?リーサが勝ったら、おじちゃんはお仕事を行かなくて良くて、みんなと旅行に行けるって。嘘じゃない?」

「ああ。」


オスカーは、ぞんざいに頷く。

赤毛のロン毛で、ひげを生やし、切れ長の瞳に厚みのある唇。

独特のタバコのニオイがいつもしてる。


❨やっぱり、おじちゃんのが、ステキだし、かっこいい!!❩

マルクスフリーク。

身だしなみは常に綺麗で優しいし、気遣いがある。それにいい匂いがするし、リーサのこと、大好き。



つまるところ、リーサが拉致られた理由は、至ってシンプル。

リーサは、稀に見る運の良さがある。

引きが強い。

この店は、四天王が認めてない新興勢力が出した賭場で、現在は、四天王に隠れながら、利益を得ている。


奴らは、オスカーの情報を知らない。

借金が膨らんでおり、返す気もなく、四天王からも追われて、逃げてる身。

だからこそ、好都合。四天王の睨みが効かない阿呆の元で、金を稼ぐ。

治安は良くなく、店も衛生的とは言えないが、中々、金巡りは良い。


ゴロツキの溜まり場。

リーサの前には、育ちの悪さと性根が腐ってる男が三人。

子供を連れてきたオスカーを最初は下卑た笑いで迎えていたが、リーサの運の良さがカードゲームの勝利を掴んでから一変。


「勝ったな。オラ。金を積め。」

「おい、いい気になるなよ。」

「…んーと、次は赤だと思う。」


赤か黒か。ルーレットの針が向いたほうを当てたほうが、勝ち。

ルーレットは赤を示す。


「やったあ。赤だぁ。」

「インチキだあ!!」

ギャーギャー、喚く男たち。

急に怒鳴りつける男たちに、リーサは、珍獣を見るような顔をする。


「テレビでみたホホザルが怒った顔みたい…!!」


ホホザルとは、サルの一種で、怒ると、ゆでタコのように赤くなり、一度、キレだすと、中々、収まらない。


癇癪を起こして、超音波を発する。

これがまたとっても、うるさく、頭に響く。

ホホザルと言われて怒りだしたのか、更に、ヒートアップ。

「…あ!」

リーサは気づいた。センサーに反応した。



バアアン…!!!

結界が張られた扉が飛んでいく。

そこには、怒りに満ち溢れ、今にでも、暴れそうなフィルが立っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る