第20話 フィルの悪夢2

我が家には、フィルを主導に、ガーデニングにも力を入れていて、四季折々の花がたくさん、咲き誇っている。


そして、小さい子供たちの為に、遊び場があり、小さなすべり台やブランコ等が設置されていて、真ん中には、砂場がある。


リーサは幼い頃から、砂場で、砂を掘るのが、好きだった。

庭に穴を開けるのは、大抵、リーサだったので、リーサの為に、砂場が作られ、そこなら、いつでも掘って良いと言われた。

その日は曇っていたが、過ごしやすい日だった。




いつものように、砂場で、リーサは、小さなシャベルで一生懸命、穴を掘っていた。

セキュリティはバッチリだった。

リーサが苦手な鳩が入ってこないように、鳩よけの魔法陣もされていたし、許可されてない人物の進入禁止の結界が張られている。


「…?」

リーサに重なる影に気づき、顔を見上げた。

目を見開き、口を開く前に、リーサは、忽然と消えた。



いつも一緒に行動してる双子は、うたた寝をしていて、リビングで目を覚ました。

時計を見ると、そろそろ、おやつの時間。

「リーサ…?」

リーサが側にいない。まだ意識が覚醒してない。頭がボーッとする。

先に起きたのか?

マッキーは、上体を起こして、オルドーの体を揺らす。

あれ?待って…?

オルドーもまだ眠気が取れないよう、うつらうつら。

「…リーサ?」

オルドーもリーサがいないことに気づいたようだ。しかし、もしかしたら、母のとこに行った可能性も高い。そのほうがあり得る。



子どもたちのおやつに、ドーナツを揚げていた。

砂糖を振りかけ、甘い香りがキッチンに広がる。

「母さんー。」

マッキーたちの声だ。起きてきたようだ。

「おやつは、ドーナツよ。手を洗ってらっしゃい。」

「うん…母さん。リーサは?」

「え?」

振り向くと、双子の姿は見えても、リーサの姿がない。



「ベイビー?ベイビー?」

フィルが呼べば、すぐに来るのが、リーサである。他の部屋に居るのだろうか。

探すがいない。返事もない。何よりもすぐに来ないのが、異常。



「庭かしら?」

リーサが庭に穴を開けるため、砂場を作った。砂を掘りたいのなら、エリアを作ってしまえば良いのだ。

お気に入りの遊び場で、もっぱら、砂遊びをしている。

「かくれんぼはおしまいよ?ベイビー。おやつよ?」

庭に出る。丹精込めて育てている花は、立派に咲き誇っている。



砂場には、リーサが遊んでいた形跡が残っていた。お気に入りのシャベルに小さなバケツ、山を作っていたのだろう跡に、小さな足跡。

「…ベイビー!?ベイビー!?出てきて頂戴。どこにいるの??」

胸騒ぎが止まらない。

辺りを見渡す。



「どうしたの?何を騒いでるの?」

ツェツリーエは、中から出て、外に出てきた。

焦っているフィルに首をかしげる。

「ツェリ!!ベイビーがいないの!!」

「え?…リーサ!!」

通る声で、リーサを呼ぶ。返事はない。

「双子といるのではなくて?」

「違うわ。二人とは一緒じゃないの。二人とも探してくれてるけれど。」

「…。」

ツェツリーエは、フィルと喋っていたと同時に足元を見た。


何気なく、砂を足で払った。

「…オスカー?」

呟いた言葉はハッキリ、フィルに届いた。

払った砂の中に吸い殻が捨てられていた。

それは、オスカーが吸っている銘柄の吸い殻だったから。

ツェツリーエの顔が真っ青になる。

目の前には、表情が抜けたフィルがいたのだから。




「マルクス様、ご報告が…リーサ様が誘拐されました…犯人は、オスカーです。」

「は?」


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