第18話 オスカー・オヴリウェン
東地区の最大の歓楽街、“色町”。
四天王と呼ばれる四人のボスがその街を取り仕切っており、お互いのシマ争いも頻繁に行われている。
歓楽街といはいえ、四天王が、それぞれ、庇護してる者たちが、店を出したり、住居を構えていたりしていて、夜の街ではあるが、夜以外は、普通の街と変わらない。
リーサの通う学校の子どもたちもここに住んでいる者がいるため、友達の家に行くことは許されている。
住居と店は区切られており、わかりやすく、大きな門があって、隔てられていて、子どもたちは、夜の街の方の店に入ることは出来ない。
「あ!いた。ボスネコ。」
住居地区のタバコ屋の看板の猫は、まんまるとした雪大福のように大きくて、店の前に置いている樽の上で日中、日がな一日、寝ている。
肝が据わっていて、近くで、乱闘騒ぎが起きようが、酔っぱらいが暴れようが、動じない。
何よりもリーサが驚いたのは、あのアルミンに対して、猫パンチをしたのだ。
驚き、固まってしまった。
猫パンチをされたアルミンは、初めてのことに驚き、けれど、嬉しそうだった。
側にいたエドガーがちょっと大変だったけど。
「お前、その猫、好きだな。誰にも懐かないんだから。人を小馬鹿にしたような顔してる。」
「マッキー、わかってないな。このボスネコはね、あのアルミンに猫パンチしたんだから!特別なネコなんだよ!モチモチしてるし。」
今日はマッキーとオルドーが同伴して、色町に来ている。
店の窓口から、タバコ屋のおばあさんが、出てきた。
「アンタたち、また来たのかい?子供が来るとこ、じゃないよ。帰りな。特にそこのおチビ。」
「あー!おチビって言ったぁ!」
「アンタがいたら、目をつけられるじゃないか。」
リーサは、チビじゃないと抗議する。
そして、なにかに気づいた。 ピクッ。
タバコ屋と隣の建物には、狭い路地があり、ツゥーと目線をやる。
そうたまたま視線をやった。
「あ!オスカーだぁ!」
ビクッ。双子は、反射的にリーサを引き寄せた。タバコ屋のおばあさんは、目を見開き、周りにいた人たちは、立ち止まる。
「オスカー!??オスカー・オヴリウェンか!?女子供を隠せ!!!野郎ども、ヤツを捕まえろ!!」
どこからか、出てきたいかつめの男たちが路地裏に入っていく。
「待てや!!!金を返せ!!!クソ野郎!!」
怒号が響く。
「オスカーに間違いなかったのかい?」
「えー?間違いないもん。あの顔はオスカーだよ!ふてぶてしいお顔。むー。捕まえたら、お説教してやるんだから!」
「リーサ!!近づくなって言われたろ!!」
「どうする?今日は帰るか?」
「えー!!?やだやだ。カルマんちに行くんだもん。」
今日はカルマの行く予定で、色町に訪れていた。
でも、まさか、オスカーが出没するなら、話は別だ。
オスカー・オヴリウェンは、至るところで、指名手配をされている。
金にだらしなく、借金は当たり前。
返すことはない。
無駄に強い。魔法に優れ、錬金術にも精通している。才能の無駄遣い。
女が大好きで愛人が各地にいるらしく、本人は、確かに、色男の部類に入るのだろう。
男らしい顔立ちにひげもよく似合っており、危険な男の匂いが漂っているが、そんなタイプが、好きなタイプは、クラリ。
フェロモンが凄いらしい。
ツェツリーエと同学年で悪友らしいと聞いた。
「え?!オスカーがいた??なら、リーサは帰れ。今すぐ、帰れ。サイダーは、残して置くから。ちゃんと帰れよ?」
伝達が来たカルマは、慌てた。
まずいまずい。あの日の再来が来てはいけないのだ。
「マダム!!オスカーが居住区辺りに出没・発見!!側にリーサが居たそうですが、マッキー達が引きずって帰りました!!やつは、捕らえることが出来ませんでした!」
「…頭の痛いことをするんじゃないよ。あのガキ。…ネズミがもう一匹、入ったね。そっちも
始末しないとね。うちは、治外法権だ。」
バンッ。机の上に溜まった書類が散らばる。
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