第17話 ミスター

毎週土曜日の午前9時に、放映される子供向けのアニメ番組。

主人公が探偵であり、世界観として、街の安全を脅かす敵対組織と争う話になってる。

リビングで、手に握りこぶしを作りながら、興奮気味に見ているリーサ。



「…やったあ。ミスターが勝ったあ!!」

敵対組織の女ボスに今回も勝った。

敵対組織の女ボスは、大人の男性に人気なセクシーキャラ。

主人公のミスターは、シルクハットに燕尾姿にステッキを持っている。

イケオジのイメージで、片手にブランデーを嗜む。

役に立ってるのか、立ってないかわからない情報をミスターが言うのだ。

それをリーサは信じている。



「リーサ、座りなさい。落ちるわよ。」

「ねえねえ、まま、女ボス、やってぇ。」

「気分じゃないわ。」


女ボスはわがままで、尊大な性格をし、部下を振り回す。

「ふふ。ベイビー、ツェリには難しいよ。女ボスの役は。」

マルクスがリーサを抱っこする。




「えー?」

「ツェリは優しい子だから、こんなふうにはね。振る舞えないよ。」

ツェツリーエは、こんな女ボスなんかよりも、高飛車に振る舞えるし、振り回す。



「いやいや。そんなことはありませんよ。マルクス様。相手は、ツェツリーエ様。えぇ。わがままは息を吐くようにつけるし、気に入らなければ、雷を落としますし、マルクス様がいなきゃ、言うことを聞くのは、稀なんですか…ぶへぇ。」

突然、現れた人物は、いきなり、床にこんにちは。


「おだまり。デヴァイス。あなた、なんで、ズカズカと家に入って来てるわけ?失せなさい。」

グリグリと、頭の上に足を乗せ、攻撃してる。

「ツェリ。やめてあげて。デヴァイス、何を言ってるの。」

「今の見てました?俺に、重力魔法をかけて、転ばしておきながらも、頭上に足を乗せて、グリグリしてますが?」

「デヴァイス、うるさい。」



この男、マルクスの秘書らしい。

軽そうな見た目、栗毛色で軽薄そうな目つきにメガネを掛けてる。


「なんで、うちにいるの!帰れ。」

「あら、ヤダ、お嬢様。お仕事ですー。デヴァイスは身を粉にして、馳せ参じてるんですよ。マルクス様、支度をおねがいします。」

「おじちゃんは、リーサと遊ぶんだから!邪魔をするな!バカ!!」


ていと足蹴りするリーサにマルクスがやめなさいと止める。足を痛めるよと。

「いや、こちらも緊急事態で…ぎゃー。ツェリ様、笑えない。」

「気分が悪いわ。黙りなさい。」

「やめなさい!あなた達。」

フィルが割って入って仲裁。




「なんで、なんで、あのバカがおじちゃん、連れて行くの!」

「お仕事なの。ベイビー。」

「デヴァイスが一人でやればいい!!」

「ベイビー、止しなさい。」

不機嫌になるリーサにフィルは、宥める。




「ヤツの所在が掴めまして、ご報告をと思いましたが、あの場では、ツェリ様たちがおられたので、控えました。」

「ありがとう。デヴァイス。ごめんね。二人はちょっとヤキモチやきさんだから。ちょっと攻撃的になってるんだ。」

「いやいや…見てました?ツェリ様は射殺す目で見てきましたが?リーサ様に関しては、噛みつく勢いでしたよ?」

「寂しい思いをさせてしまったから。」

「えー…出た。妹フィルターと姪フィルター…。」

「ふう。で?どこにいたって?」

「14番街の寂れたバーにいましたよ。安酒と相変わらずあのタバコを吸っていましたが、ピンピンとしてましたよ。えぇ。図太さと頑丈さは、目を瞠るものがありますからね。」

「相変わらず、ジゴロのような生活をしてるんだろう。愛人の家を転々としながら…全く。」

「相も変わらぬ、俊敏さも持ち合わせておりまして。肝心な出処までは、吐きませんでしたけど、まあ、彼が掴んだんなら、そうだと思います。一応、凄腕の情報屋ですから。」

「それが無ければ、見過ごすと思う?」

「あの件ですね…。」

「うちのベイビーを誑かして…可哀想に…!!」

賢明に口に出さないデヴァイスは、遠い目をする。

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