第16話 ミレアム家で作った品々
ようやく戻ってきたアンジェリカは、3人で作った生地をベースに、パイを作った。
表面はパリパリに中身はふわっと。バターを利かせて。
竈の中に入れて、パチパチと火の焼ける音がする。
テーブルには、既に、ジャムやクリームなどの瓶が並び、チーズやハムなどが置いてある。
「これは、ちょっとしょっぱい寄りのハム、こっちのは、脂身が多いハムで、このチーズは、味が濃いの。反対にこれは、食べやすいチーズね。これがうちの自慢の上澄みクリームよ。」
脂肪分たっぷりの上澄みクリーム。
これ目当てでミレアム家に訪れる客もいるぐらい、美味しくて評判が高い。
「いいかい。あんたたち。お土産を渡すけど、帰るまで、開けるんじゃないよ?ちゃんと、フィルとコルルに渡すんだ。」
上澄みクリームとハムにチーズを渡す予定。
つまみ食いしないように忠告する。
「知ってるー。」
「目を合わせな。」
ハムに目が行っている。
「美味しい。」
焼けたパイをバクバク。ジャムを塗ったり、バターを塗ったり、上澄みクリームを塗ったり、ハムやチーズを乗せてみたり。
「リーサ、あんた、コモゾリスみたいだよ。聞いちゃいないね。」
「マリー、その上澄みクリームの瓶、取って。」
「アルミン、口にパイがついてるわよ。」
食べることに必死。いっぱい食べた分、お腹ペコペコ。
「そうだ。ふたりとも。あたしね。リリーエおばあさまの教えを受けられることになったの!リリーエおばあさまに、お願いしたら、是非にって言ってくれたの!」
「おばあちゃん?」
「そうよ!ニコルのお嫁さんになる前に立派なお嫁さんって言われたいからね!リリーエおばあさまは、行儀見習いの先生として、凄いし、生徒はみんな、立派な淑女ばかりだもの。」
マリーウェザーは、直談判して、教えてくれとねだった。
熱量の凄いマリーウェザーの勢いに、大層、リリーエは感激し、受け入れたそうだ。
「リリーエおばあさまの家は、ここから遠いでしょう?だから、転移術で、行くのよ。」
転移術の一つの方法として、座標を指定し、行き先に向かう方法だ。
今回使用される方法は、一番、手軽で、転移術の魔法陣が刻まれている絨毯の上に座り、魔力を流すだけ。
リスクが低く、予め、行き先を決め、行き来するだけのもの。
「ほん。転移術…。」
「リーサ、あんたは使えないよ。マリーは、習いに行くんだから。遊びに行くんじゃないよ。」
「リーサ、まだ何も言ってない。」
「顔に出てるよ。」
リリーエは、現在、隠居生活をしており、湖畔が綺麗な土地で、ゆったりと暮らしている。
家族は、リーサが絶対、転移術を使えることがあれば、好きなように行き、相手を家まで、連れてくるとわかりきってるため、本当に使う時以外は、使用禁止。
同様にアルミンも禁止されてる。
家に帰ったら、知らない魔物がいたら、大変である。
「リリーエ先生に習ったら、あんたたちに、何か、プレゼントしてあげるわ。期待してて。」
マリーウェザーは、微笑む。
いつもマリーウェザーは、二人のお姉さんである。
「あらあら。随分、持たせてくれたのね。上澄みクリームとまあ。いい匂い。濃厚なチーズの香りに脂身の乗ったハムと…あらあら、ベーコンまで。あら?これははちみつ?」
「はちみつ、貰ったんだって。ダンジョンで取れたやつだって。何だっけ?何とか、ビースト。」
「そうなの?あらいい香り。上質ね。色も良いわ。甘くて…蕩けるみたい。」
「これはね。リーサたちが一生懸命、捏ねたパイだよ!美味しく出来たの!」
「あら、美味しそう。食べないとね。」
「あ!これは、アンジェリカがおばちゃんに渡してって。」
手紙を渡す。今日のリーサの態度が書かれている。概ね、良い子だったと書かれている。
リーサがマリーウェザーから転移術の話を聞いたから、要注意だとも記載されてる。
これはまずい。
マリーウェザーがリリーエの元で指南を受けることは聞いていた。
元々、興味深そうにしていたし、リリーエとも性にあう。
リリーエからもマリーウェザーにあれこれ、今から教えるのが、楽しみだと教えてくれた。
今は、下手に突かない方がいい。
リーサの興味が転移術から逸れることを願って。
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