第14話 マリーウェザー・ミレアム

 

ミレアム家は、大きな農場を営んでおり、とても自然豊かな敷地に家がある。

 この世界には、冒険者と言う職業もあり、ダンジョンも存在している。



 彼らが取ってくる魔物の肉は、世間にも、広まることはあるが、ダンジョン産や野生の魔物の肉以外は、畜産農家で、管理されている。

 中でも、ミレアム家の畜産規模は、大きい方で、良質な肉と卵と武器が手に入るので、人気だ。



 何かしらの理由で引退した冒険者の再就職先の受け入れもしており、冒険者の登録先でもあるギルドからの信頼も厚い。


「もー。アルミン。日が暮れちゃうわよ。」

「ふふ。うん。」


 マリーウェザーは、この日、リーサとアルミンと我が家でお手伝いをするために、呼ばれた二人のお姉さん役としている。

 アルミンは、放牧しているオオツノ・バイソンが気になってるようだ。


 オオツノ・バイソンは、名の通り、角が大きく、頑丈で、その角は、武器の材料にもなる。

 一年に一回、角の生え変わりがあり、それを採取して、武器屋や素材屋に売っている。

 ただ、気性は中々、荒く、縄張り意識が強いため、群れに入ってくる部外者は、ド突き回す。


 油断していると、肋骨を折ることは、ザラである。故に、採取は命掛け。

 だが、アルミンマジックにより、オオツノ・バイソンは、アルミンが触ろうとしても嫌がらない。

 子牛のように、愛でている。



「うちの従業員は、慣れてない頃は、いつも、どこかしら、怪我を負ってたわ。たまに、ギルドから、要請を受けて、なんていうの?冒険者たちの訓練にあの子たちの面倒を見てもらってるわ。この前なんて、あそこにいる子牛に永遠に追いかけ回されてたわ。」

「…子牛?」

 オオツノ・バイソンは生まれた頃は小さいが、数ヶ月もしたら、大きくなり、成体と変わらない。

 初心者には、大人と子供を見分けられない。

「アルミン、コルルおばちゃんとの約束、思い出さなきゃ!」



 リーサの言葉にハッ!

 駆け寄って、リーサと手を繋ぐ。

「コルルおばちゃんに褒めてもらおうよ!リーサたち、ちゃんと出来たって!」

「えらいね!って褒められるよ!」

「まだ始まってもいないわ。」

 母の元に行かなければ、道草食っていたら、心配かけちゃう。




 バルコニー付きのログハウスが見えてきた。

 マリーウェザーの家である。

 慣れた手付きで、扉を開けると、木の香りがふわっと鼻をくすぐる。

「お母様ー。二人を連れてきたわよ!」


 玄関のマットレスには、汚れを落とすための魔法陣が描かれており、ふかふかのマットレスに足を突っ込むと、泥がついた足でも、完璧に落とせるようになっている。

 奥から、動く気配がする。

 長い髪を後ろで束ね、可愛らしいフリルのエプロンを身に着けたマリーウェザーとそっくりな顔の母親、アンジェリカだ。


「こんにちは、アンジェリカ。」

「よく、来たね。あんたたち。さあ、手紙を預かってるね?もらうよ。今日、あんたたちが褒められるかどうかは、今日の働き次第だよ。わかってるね。」

「うん!」

 フィルとコルルが認めた手紙をもらう。

 再三に渡る二人の世話の願いとお願いが書かれていた。

「さあ。ついたとこで、持ってきたエプロンを着けな。マリー、手伝ってやんな。」

「こっちよ。ふたりとも。」

 鞄の中から、エプロンを被る。




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