第12話 お茶会(ツェツリーエ・カイヤの場合)

庭でお茶会を開くには、良い快晴の日。

美しい庭園に、屋外に設置されたテラス席。

ゆったりしたソファーに美女が二人、座っている。


テーブルには、メイドがお茶を淹れてくれたティーカップと美味しそうなお菓子が綺麗に並んでいる。


「ひどいのよ!フィルったら。お母様にバラしたのよ!お兄様にしつこく、嫌がらせをしてきたやつを懲らしめただけなのに!ちょっと、雷と嵐を呼び寄せただけだわ!」


マルクスに嫌がらせをしてくるやつに嫌気がさしていたツェツリーエは、そのバカを捕まえ、何百万ボルトの雷と息をつくのも困難になるほどの威力の高い嵐を呼び寄せ、味あわせた。

死んでいない。殺してない。ちょっと威嚇しただけ。火傷したようだけど、命はある。



「考えてみなさい。フィルは、厳しいのよ?私だって、ニーヤお兄様にしつこく纏わりつくストーカーを引き剥がしただけなのに。お母様に報告されたわ。



カイヤも当然のように、ブラコン。

実兄のニーヤを尊敬している。

ニーヤに纏わりつくストーカーを妹であるカイヤが許せるわけがない。

カイヤは、女を拉致した。そして、お得意の幻術を見せた。彼女は、高スペックの幻術使いだ。


ストーカーに対しての見せた悪夢は、カイヤにとっては、ちょっとした罰のつもりだった。

大きな暗闇に自分はただ佇み、動けない。

数百メートル先に見知らない人物が同じように佇んでいる。


言葉は発せるけど、会話の意思疎通は出来ない。段々近づいてくる人物。ゆっくり…ゆっくり。

そして、いざ、目の前に、それが迫ると、顔が崩れる。大きな口を開き、どんどん開いて、歯が見え、気がついた頃には、吸い込まれて、呑み込まれる恐怖を味わう。



「私は説教と罰が与えられたわ。しばらく家から出して貰えなかったのだから。」

カイヤはため息をつく。綺麗なマニュキュアが塗られた指でティーカップを軽く弾いた。

「私だって、そうよ。お母様ったら、わざわざ、命令して、私が外出する度に、監視をつけたのよ!息が詰まるわ!」


二人は外出して、買い物をするのが、大好き。縛られることが嫌い。

カイヤは、実母から、外出禁止令を言い渡され、ツェツリーエは、監視付きが言い渡された。


「リーサが見たことない顔がいるって、指さしてたわ。まだまだね。リーサに見破られるなんて。いい気味だわ!お母様に叱られればいいわ!」

「あの子は、野生レベルでカンが鋭いじゃない。認識阻害をきちんとしないと、あの子にはバレるわよ。」

プリプリ怒るツェツリーエにカイヤは、うなずく。




「ねえねえ、何してるの?まだ、ままを見てるの?ままのことが好きなの?」

「違いますよ。リーサ様。ジオルク様とかくれんぼしてたのでは?私ではなく。」

「だって、ジオルクんちにもいるんだもん。気になるもん。ねーねー、お名前、教えて。」

「まだ教えてと良いと言われてないのです。申し訳ありません。」

「…リーサちゃん?誰と話してるの?次はかくれんぼじゃなくて、あっちで、花遊びをしよう?」

「うん、するー。」



隠密機動している者の何よりも厄介は、リーサである。

リリーエから厳命され、ツェツリーエの外出先には、同行し、監視するようにと。

しかし、何故か、リーサにバレる。


お気に入りのカフェ、服屋、宝石屋、友人宅などなど。

どんなに、隠蔽行為をしようとも、リーサは気づく。

目線でこっちを見てくる。

ツェツリーエにバラす。

ツェツリーエの幾度の嫌な顔が浮かぶ。

ちょっと、こっち、本気出してるんですか。

背景に溶け込んだり、覚えにくい平凡な顔に変装してみたり、人物を変えてみたり。

報告する度に、リリーエからは、リーサにバレてどうするのですと言われる。

いや、あなたの孫娘様は、カンが鋭いです。もはや、野生動物並みです。

今も、隠れてる部下の位置を楽しそうにジオルク様に仰ってる。

ジオルク様が気を遣ってらっしゃる。

あ。お気遣いどうも。視界から、リーサ様を外してくださり。もうあんな幼子に気をつかわせた。特訓だぁ。バカヤロー。



「反省と言う言葉と態度をあの子達は知りませんわ!」

リリーエは、自室で報告を聞きながら、呆れたように、ため息をつく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る