第11話 見学

授業の一環として、魔法の基本装備に使用する道具が買い与えられる。

入学当初に身につける腕輪をはじめ、魔力循環をコントロールするための補助役を担うイヤリング・ネックレス・指輪(この中から、どれか一つを選ぶ)


小さい子ほど、魔力のコントロール維持が大事。暴走することは危険に及ぶため。

特に魔力が多い子は、循環する魔力が身体に巡りまわり、耐性が出来ないと、最悪の場合、死に至る。


授業では、魔力コントロールの授業もあり、生徒は、しっかり学ぶ。

「オフィーリアちゃんは、イヤリングにしたんだね!」

「うん。リーサちゃんは、ネックレスにしたのね?指輪にするのかなって思ってた。」

道具はそれぞれが用意するため、約束をしてなければ、誰がどのような道具を買うかは知らない。

みんな、授業になってからお披露目し合う。

恒例行事の一貫。


「お店でね、ずっと悩んだぁ。パパが、ちゃんと見て選びなさいって言ってたから。」

主な材料は、ミズサール銀が使用されている。

ミズサール銀は、魔力伝導率が高い。

錬金術師が、錬金で、道具を作るのだ。

いずれは、錬金術科の子らが、作ることもあるだろう。

形などが全く異なる。一つ一つ、デザインが違う。


オフィーリアの耳には、小さなドロップ型のイヤリングを身に着けていて、可愛らしい。

反対に、リーサは、二重のネックレスで、馬の蹄ね形をした飾りがついてる。

「月のモチーフのやつと悩んだんだけど、こっちがいいなって思ったの!」

「私も悩んだ。このドロップのと、桜のモチーフの、どうしようかなって。」


キャッキャ。


「錬金術科の授業が見れるんだよね?こういうの、作ってるんだよね?凄いよね?」

「ね!楽しみだね!」

今回は、合同で、錬金術科と普通科の一年生が錬金術の授業を見学しに行くのだ。



大きな塔が2つあり、座学などの授業を行う本棟と魔法や錬金術の授業などは、別棟で行うことになっている。

ぞろぞろと、別棟に向かう。

今回、見学するのは、錬金術科の5年生の授業風景を見学する。


「あー!あそこにいるの、コハクだよ!おーい!」


コハクは、ドワーフの子供であり、リーサの保育園の時からの友達。

ドワーフの特徴でもある小柄で、くりくりとした円な瞳と丸びおびたほっぺた。

耳には、大きなリング型のイヤリングをつけている。


「リーサだあ。おーい!」

錬金術科の一年生担任のジュリー先生と手を繋いでる。

ジュリー先生は、花柄のワンピースを着た可愛らしい女性で、彼女もドワーフだ。

瞬時に目配せをする担任たち。



教室内は静かに授業をしている。

今は、課題の魔道具を作っているようだ。

真剣そのもので、何かの液体を流し、魔力を流しながら、型にはめている。


「あれは、今、炎の魔石を砕いたものを軸に、魔銀の型に嵌めて、形成させています。」

「わあ。細かい…。」


感動する一同。

奥の生徒は、型を調節してるのか、金槌でカンカン叩いている。


「ねぇ、見て、あの金槌、何か、細かい模様みたいなの、ある。」

「本当?見えなかった。」

目敏く、金槌に細かい模様みたいなものが、刻まれているのに、気づいた。


「今度、うちに遊びにおいでよ!じいじにお願いして、工房を見せてもらおう。」

「いいの?」

コハクの家は工房があり、コハクの祖父は、錬金術師としても職人としても巨匠として名高い人物だ。


彼の手かげた物は、価値が高く、高価に取引されることが多い。

「コハクのまま、いいよって言うかな?」

コハクの母親は元商人をしていた経歴を持つ女性であり、義父の作品のファンでもありながら、孫息子のコハクを目に入れても痛くないほど、溺愛してる彼に、金で買えない価値のものをおもちゃ代わりにしたことを阿鼻叫喚し、尊敬してるはず?の義父に錯乱して、頭を引っ叩いた。

「じいじもお弟子さんたちもいいよって言ったよ!」

「じゃあいいのかな?いくー。」

阿鼻叫喚地獄を再現しないために、是非、コハクの祖父には頑張ってほしい。




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