第8話 お祝いの手紙が続々と届く

入学祝いに、祖父母からのお祝いの手紙が届いた。まだ文字を読むのは、ちょっと難しいため、補佐を頼んで読んでもらう。



母方の祖父母からは、主に祖母が書いたのだろうとわかる文面だった。

つまり、ツェツリーエの母親であり、リーサの祖母だが、とても礼儀作法に厳しい。

行儀見習いの先生として、優秀であり、かつて、フィルは、彼女の生徒だった。


何よりも、祖母は、フィルを自慢に思っている。息子のマルクスとの結婚を誰よりも喜んでいた。

フィルに全幅の信頼を寄せていて、ツェツリーエともし、喧嘩をしたら、全面的に、フィルの味方。十中八九、ツェリが悪いと宣う。

これは、孫娘のリーサも同じで、フィルを困らせたら、孫娘だろうと、容赦ない。


「んー!おばあちゃんったら!お小言は、いらないのに!」

「普段の行いを思い出しなさい。フィルがその日に、お母様にゴットリー先生の事を話したら、随分と感激されていたみたいだわ。益々、逃げ場がないわね。」

「リーサ、お返事を書いたら?わがままを書いたらだめだよ。ほら、おいで。手伝うから。」

サラトガがリーサに返事をするための手紙を書くように促す。



「んーと。おじいちゃん、おばあちゃんへ。」

「…リーサ?それは何を書いてるの?」

「アルミンの家に新しく来た猫ちゃん。」

「うーん。」

あの日、コルルの反対を押し切り、飼われることになったムーンキャット。

よく、アルミンに懐いてるようだ。

その情報は、二人の耳に入っている。すぐさま、労るように、コルルに、何かしらの一報を送ったらしい。



「あら、リーサ。こっちは、ダグラスおじさま達からよ。」

ツェツリーエから渡される。封に、家紋のドラゴンが3頭、刻まれている。

こちらの文面は、サラトガの父のダグラス直筆。万年筆の引き方に、厚みがある。

「んーと、リーサ、入学おめでとう。」

男らしい文筆で、孫娘の入学祝いを心から喜んでいることが綴られていた。

「森で迷わないように、ランタンを持ちなさい。気に入らないやつが現れたら、穴に落としてやりなさい…ちょっと、何を唆してるんだ。本気にしちゃう。いい?リーサ、しちゃだめ。森に勝手に入ったらいけないし、気に入らないからって、穴に人を落としてはいけないよ。」

「シャベルがあれば、掘れるよ!」

「違うよ。しちゃいけないの。気にいらないのを穴に落とすのは、母さんだけで十分なんだから。これ書くように言ったのは、さては、母さんかな。」


学校には、生い茂るような森が広がっていて、そこには、自然と共に、生態系が繰り広げられている。授業でもよく使われる。

「そうよ。穴を掘るなんて、時間がかかるわ。雷を落としたほうが、早いわよ。」

「ツェリ。」

雷の適性が高いツェツリーエは、稲妻のツェツリーエと呼ばれるほど、雷魔法に特化している。ツェツリーエは、気に入らない連中を問答無用で、雷を落としている。

なまじ、とても強い。ツェツリーエは、実兄達がなんと言おうと、強い魔法使いだ。

「えーと!」

返事を書くリーサは、もし、気に入らないやつができたら、教えるね!と返事を書いた。



「あ!フランツおじちゃんからだあ!」

封には、優美な立派な鬣がある黒馬が刻まれている。そして、差出人は、母の二人目の兄であり、世界で一番の騎士ナイトと思っている伯父からの手紙。

フランツ・ハルベル。

今は、遠くに住んでいて、中々、会えない。

「んーと、入学おめでとう。リーサ。誇らしく思うよ。…!!わあ!見て、フランツおじちゃんがリーサとお手紙の交換をしたいって!」

「…本当だ。良かったね。フランツに練習した成果を見せないと。」

「フランツお兄様が?大丈夫なのかしら?お忙しいのに?」



フランツは多忙であるが、姪の為に、文通をしようと提案してくれた。

実を言うと、マルクス・フランツ・ツェツリーエは、子供でも知っている“ハルベルの三兄弟”として、有名であり、兄弟仲が大変よろしい。

マルクスは、下のフランツやツェツリーエがどんなに強くともかわいい子たちと言い、溺愛してるし、フランツは、マルクスを敬愛し、ツェツリーエを溺愛してる。

ツェツリーエは、兄二人に溺愛されているため、兄二人が中心であり、誰がどんなことを言おうとも、一番ステキだと宣う。ブラコンである。


もれなく、母から英才教育を受けたリーサもおじブラコンと言うやつである。

「おじちゃん!おじちゃん!見てぇ!フランツおじちゃんがリーサとお手紙を交換したいんだってぇ。」

「フランツから?見せてくれる?良かったね?ベイビー。ベイビーがフランツのために手紙を書いてくれたら、あの子も気が紛れるだろうからね。」

「おばちゃん、おばちゃん、見てぇ。」

「良かったわね。ベイビー。」

キャーキャー、はしゃぐリーサをニコニコしながら、見つめる二人。

「見て!フランツおじちゃんからだよ!」

「はいはい。見たって。」


しつこく見せてくるリーサに慣れてる従兄弟たちは、慣れたようにあしらう。

ちなみに、祖父母やフランツからも各々、進級などの祝いの手紙が送られて来てるが、きっちりと、内容がみんな、全員違う。

祖母とフランツからは進級などの祝いの言葉が綴られてるが、ふたりとも、どこで知ったのか、説教が混じっている部分がある。

わかっている。フィルからの密告だ。

「げぇ。フランツ叔父上、こんなびっしり、説教を書かなくとも…。」

フランツからよく注意されるスペンサーは、眉をひそめる。



曰く、まず、部屋の掃除に加え、管理能力を身につけるように、危ない開発をするのではない。いたずらをするな。兄上マルクスに迷惑を掛けるななどなど。

「あら、スペンサー、フランツお兄様の言うことを聞きなさいな!」

「ツェリおば様は、フランツ叔父上から説教されたことがないから、言えるんだ。」

シスコンであるフランツが例え、どんなことを、ツェツリーエがしていても、容認している。代わりに説教するのは、母とフィルだ。





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