第14話 介助
要塞に到着するとバルクトライは護衛を解散させる。
「どうもお疲れさん」
指示を受けたショーティスが護衛にお土産を手渡しした。
「ありがとうございました」
3人の護衛はバルクトライに肩を貸して去っていくショーティスの後ろ姿を見て口々に言う。
「あれ、本当に男か?」
「顔だけだとちょっと分からんよな」
「俺、男でもいい」
これから司令官は熱い夜を過ごすのかと思ったが口にはしなかった。
そんな噂話をされているショーティスは要塞の中を通り抜け司令官の私室まで連れていく。
バルクトライ巡回中の兵士の敬礼にはなんとか返礼しているが、ほとんどショーティスに抱きつかんばかりになっていた。
「おかしいな。飲む量を控えたはずなんだがいつもよりだるい」
ぐらぐらと首を振っている。
実際のところはいつもと同量かやや多い量を飲んでいることに気がついていない。
まあ、酔っ払いというのはそういうものである。
ショーティスはなんとか私室前まで連れていった。
バルクトライはかじりつくようにして辛うじて立っている有様である。
「閣下。あと少しですからね。部屋の鍵はどこです?」
「どこかのポケット……」
ぐにゃぐにゃしながら、あちこちを探った。
なんとか見つけ出すと鍵穴に差し込もうとするがなかなか入らない。
ようやく解錠できたのでショーティスは最後の数歩を頑張って運ぶ。
バルクトライをベッドに座らせ鍵を取りあげるとベッドサイドに置き、コップを探しにいった。
店を出るときに渡された容器から酔いざましの水をコップに注ぐ。
ベッドに戻るとバルクトライは仰向けにひっくり返っていた。
なんとか抱き起こす。
半分目を開けたバルクトライに話しかけた。
「閣下。水です。どうぞ」
口にコップを添えるとゴクゴクと飲む。
「服を脱いでください。皺になっちゃいます」
バルクトライはおぼつかない指でボタンをまさぐるがすぐに諦める。
「無理。もう寝る」
ショーティスはコップを置くとボタンに手を伸ばした。
「閣下。お手伝いしますね」
「よろしくぅ」
すぐに船を濃き始めるバルクトライを支えつつボタンを外す。
「はい、腕を抜いてください。そっちじゃありません。そう、いいですよ」
片腕を苦労して抜くとあとは簡単だった。
シャツの裾をズボンから引き出して、こちらのボタンも外す。
胸が露わになったのを見てショーティスは眩しそうな顔をした。
シャツは遊びの部分が少ないのか、どうしても脱がせることができない。
諦めて下半身に取り掛かる。
「ズボン脱げますか?」
問いかけにバルクトライはむにゃむにゃと返事をした。
「閣下。起きてください。次はズボンです」
呼びかけるが反応はない。
「困っちゃうな。自分で脱げないのか。どうしよう」
ショーティスは足側に回りこむとまず靴を脱がせる。
次いでバルクトライを見下ろすと困惑の表情を浮かべた。
「どうしよう。やっぱりズボンも脱がせた方がいいよね」
独り言を漏らす。
「閣下。起きて脱いでください」
呼びかけられた方はスヤスヤと寝息をたてていた。
「閣下。起きないと僕が脱がしちゃいますよ」
そっと声をかけるが当然のごとく反応はない。
「失礼します」
ベッドに片膝を乗せると手を伸ばしてベルトのバックルを外した。
ズボンの前隠しのボタンも外す。
片手で腰を支えるとズボンを引っ張った。
ある程度ずらせばあとは片脚ずつ交互に浮かせてズボンを引き抜く。
作業をするショーティスの呼吸は速くなり、頬を赤く染めていた。
ペロリと舌で唇を湿らす。
赤々とした唇を抜ける吐息は熱い。
下着にシャツを羽織っただけという姿に切なげな視線を送る。
それでも職務を思い出したのか、上着とズボンの形を整えるとクローゼットにしまった。
ベッドの側に戻ると仰向けだったバルクトライが横向きになっている。
うなじを見るとショーティスは抑えが効かなくなった。
静かに体を寄せると首筋に顔を近づける。
アルコールが全身に巡って暑いのか僅かに汗ばんでいた。
ショーティスはさらに顔を寄せる。
バルクトライの香りを深々と吸い込んで陶然とした表情になった。
吐き出す息が首筋にかかりおくれ毛を揺らす。
ショーティスはバルクトライの首筋に舌を這わせた。
「んー、美味」
ますます表情を蕩けさせる。
以前から男性の首筋に興奮することは自覚していたが、なかなか舐める機会がなかった。
念願がかなってうっとりとする。
もう1度と顔を寄せた。
手をついて体を支えていた場所のマットレスがミシリと音を立てる。
その音のせいかバルクトライが身じろぎをした。
ショーティスはびくりとする。
完全に寝ているかと思って大胆なことをしたが、今目覚めて気付かれるのはまずい。
まだ出会ったばかりであるし、気持ち的に引かれたら解雇もありえた。
ショーティスはいつでもなんでもする準備ができている。
しかし、バルクトライはそうではないだろう。
ここで性急に迫って嫌われては元も子もなかった。
未練がましく首筋に視線を向けると、溜息をついて立ちあがる。
「お休みなさい」
最後にもう1度バルクトライの後ろ姿を眺めると密やかに部屋を横切った。
すぐ隣の続き部屋へとつながる扉に向かう。
イシュタルに渡されてあった鍵を使って解錠した。
バルクトライのものに比べるとずっと小さな部屋へと足を踏み入れる。
従卒の制服を脱いで綺麗に畳んだ。
ショーティスはベッドに潜り込むと目をつぶる。
色々なことを思い出し気持ちが昂ぶってなかなか眠れなかった。
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