第3海 サメちゃん知る!
「ぷっぷっぷ~。ぷっぷぇぷぇ~」
「あらあらお嬢ちゃんご機嫌ね~」
サメちゃんが鼻歌を歌いながら泳いでいると、ひらひらの傘を持ったこれまたひらひらのドレスのご婦人が話し掛けてきた。
「だ~れっ!」
「あらあらうふふ、私はデスクラゲのムゥンよ~」
「サメちゃんはサメちゃん!」
「あらあら、それだとデスクラゲのデスクラゲみたいになってしまうわ。ママから貰ったお名前は?」
「ヤダ!」
サメちゃんはぷいっとそっぽを向いた。
「あらあら、じゃあおばさんが名前を付けてあげるわ。ほっぺちゃんね。可愛いもの~」
サメちゃんは気に入らないのか歯を抜き出しにする。
しかしムゥンは全く気にしていない風にふわふわと微笑んでいた。
「ほっぺちゃんは何をしていたの~?」
「サメちゃんは泳いでたよ!海の端まで行くんだ!」
ムゥンはその言葉を聞くと出会って初めて困ったように眉をひそめた。
「あら~、大海の端まで?カクバクハツマグロでも月が何百回もなくなるくらいかかるんじゃないかしら……」
「タイカイ?」
「この海の名前よ~。一番大きな海でたくさんの種族が集まる海」
「ふーん、どれくらい泳いだら端まで着くの?」
「ほっぺちゃんがおばさんよりしわしわになったらかしらね~」
「ヤダ~!」
駄々をこねるサメちゃんにムゥンは思いついたように下に指を指した。
「じゃあ深海に行くのはどうかしら?端よりは近いし大海とは別の景色が広がってるわよ~」
「シンカイ!」
サメちゃんの目が輝く。
「でもどっちみち今のほっぺちゃんじゃ厳しいわね~。もっとご飯食べて大きくならなきゃ」
「ゴハン!お腹空いた!」
サメちゃんは思い出したようにお腹を抑えると大きい音がお腹から鳴った。
「ここから右の方のウチワワカメのお家を越えた先に大きなネムリクジラがいるわ~。そこが亀飯亭。ご飯が食べられるわよ~」
「ゴハン!ありがと!」
聞くや否やサメちゃんは猛スピードで目的地に向かって泳ぎだした。
「でも月が沈むまでに出なきゃダメよ~……って聞こえてないかしら~」
ムゥンはふよふよと漂いながらもう遙か先に行ってしまったサメちゃんの背中を見ていた。
サメちゃん大海冒険紀 異界ラマ教 @rawakyou
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