大海
第2海 サメちゃん名前を貰う!
「ハァーイ!サメちゃんベイビーたち~!せいれーつ!」
新たな海に降り立ってから、各々が周辺を泳ぎ回ったり喧嘩している中に声が響き渡る。
なんだなんだとその声の元に散り散りになっていたサメちゃんたちが集まり始めた。
「あー、コホン。生まれましておめでとう!サメちゃんママです!みんなよくもお腹をたくさん噛んでくれましたね。とても痛かったです」
サメちゃんママがお腹をさする。
かわいそー、だいじょうぶー?と声が上がるがその声の主のほとんどは犯人である。
「それでは、早速ですがみんなに名前をあげちゃいます!」
サメちゃんたちはとりあえずわーわーと歓声を上げた。
「まずは一番はしっこのサメちゃん!あなたは……『すきっ歯』!」
そう言われたのは、先ほど背ビレに噛み付いてきたサメちゃんであった。
殴られたせいで歯が一本欠けているのでその名前なのだろう。
「次!あなた……というかあなたたちは……『さみしがり』!」
再びわーわーと歓声が上がる。
黒い矢に例えられたそのサメちゃんたちはみんなで寄り集まりまるで一つの大きな生き物のようになっていた。
「次!あなたは……」
ついに自分の番が来る。
名前を付けられるなんて生まれて初めてだからドキドキが止まらない。
「『欠けビレ』!」
思わずバッと自分の背中を見る。
そこには噛み付かれたせいで無残にもギザギザの形で欠けた背ビレがあった。
「後は『ビリビリ』『バラバラ』『トゲトゲ』!終わり!」
一気に残りの名前を読み上げると、サメちゃんたちがぎゃーぎゃーと騒ぎ出そうとしていたのを手を叩いて制した。
「はいっ!それではみんなは名前を貰ったのでもう自由です!このままサメちゃんママと一緒に来るもよし!大海へ繰り出すもよし!何もしないのもよし!この海には戦いも食べ物も友情も恋も苦しみも痛みも何でもあります!各自好きなよーに生きるように!では、解散!!」
サメちゃんママの号令と同時に『さみしがり』がサメちゃんママに襲いかかった。
サメちゃんママはすぐに応戦し『さみしがり』の半数を吹き飛ばしたが散り散りになった『さみしがり』は再び集結し襲いかかる。
スゴい姉妹だなーとそれを見ていた『欠けビレ』ことサメちゃんは『すきっ歯』に話し掛けられた。
「おい『欠けビレ』!背ビレがスカスカで寒そうだな!いっそ全部取ってやろうか!」
「なんだと『すきっ歯』!そっちこそ物が食べ辛いだろ!全部折って飲み込みやすくしてやろうか!」
お互い激しく睨み合う。
だがサメちゃんは背ビレがこれ以上なくなるのはイヤだったし『すきっ歯』も歯を失うのはイヤだったので喧嘩には発展しなかった。
「『欠けビレ』はこれからどうすんの?」
「これから?海かな~。とりあえずこの海の端まで泳いでみる!」
「そっかー。あたしは海のチャンピオン目指してみるよ。強くなりたいな」
『さみしがり』が泣きながら方々に散っていくのが見える。
サメちゃんママは勝利を収めたらしい。
「あと、もう一つやりたいことある」
「わたしも!」
せーの、と二人で息を合わせる。
「「新しい名前を手に入れる!!」」
あはは、と笑い合う二人。
「またね『欠けビレ』今度会うときは名前の発表会しよ!」
「うん!またね!『すきっ歯』」
こうしてサメちゃんたちは新たなサメ生を歩み出した。
海は広く大きくそして優しい。
サメちゃんたちの歩みを応援するかのように海は一段と青く透き通っていた。
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