第13話 本題 4 (その三)

     二十五


「ねぇ?」

「どおしたの、楓花」

楓花あたしの疑問の始まりは、よく覚えてないんだけれど、マルちゃんは覚える?」

「タイシテ重要なことじゃなかったような気がする。色褪せた後は、曖昧になるのかなぁ」

赤瞳わたしがユリさんから聴いた話しでは、蒼い鳥は何処からやって来て、何処に向かうの? と云ったようですよ」

「蒼い鳥じゃなくて、青い鳥でしょう」

「どうして、そう想うんですか?」

「小さい頃、青い鳥を飼いたいと云って、母を困らせた記憶を思い出したからよ」

「今考えても、青い鳥になりますか?」

「どういうことよ」

「幸運を運ぶのは、青い鳥ではなく、蒼い鳥です。今で云うなら、AI仕様になりますがね」

「地球上に生息していないのですか?」

「コウノトリで解りますよね」

「妹や弟? ってことなの」

「無理難題の答えに困ったんでしょうね? そこにある空想は、人間の想いを越えたものを差します。純心を守るためなら、嘘も厭わない方も居ますし、永久に見続ける可能性はありませんから、取り繕った可能性が高い方も居ます」

「何を基準に判断するのでしょうか?」

「一本木と云う気性が、日の本の國の特質にしようとされた理由は、卑弥呼さんの心情を解ろうとした人間が居なかったからです。ガリレオさんやニュートンさんに眼を着けた理由? とは考えられませんかね」

「環奈には教えてなかった、ご免。霊峰富士の麓にある樹海に、結界が存在しているのよ。そこの住人が、ニュートンさんやガリレオさんを始めとする、偉人と云われる科学者なのよ」

「うさぎさんの幼少期に必要だったのが科学者なら、三妹さんも絡んでいるんだろうけれど、関係ないの?」

「卑弥呼さんと対立している理由は、ゼウスとプロメテウスが対立していると、ギリシャ神話に綴られているから、日の本の國にそのまま伝わったみたいだよ。どうやってそれを知ったか分からないけど、神の国だったなら、追いやった背景が残っていそうだよね」

「ゼウスの妻だったヘラが、三妹さんだからなのね。そうなると、結界と云うものの存在が、科学的効力に包まれていることにならないかなぁ?」

「それが全然無いの? 女神様が顕れた時に観たように、勾玉が突如現れて、詞だけでなく、呼吸さえ無に還したように行われるみたい? なんだよ」

「神秘的空間? ってことなんだね」

「お日様の光がなくても、視界は良好だし、蒸し暑いとか、肌寒いとか感じないから、夢見心地ってことかも知れない。なのに、しっかり地に脚が着いてるのよね」

「楽園? 桃源郷? すべての総称が天国? になるのかなぁ。だったら結界こそが天国になるよね」

 ふたりが見つめた先は、ひょっとこのような無感情で見詰める、うさぎであった。様々な感情で、乙女たちの疑問に答えを見付ける作業をしているようには映っていなかった。性的な観点を抜きにしても、分からないことがそこにあった。それが、時代背景が造り出す色合いであることは、間違いない。うさぎは導き方を準備できていないようで、持て余す始末となっていた。


 うさぎはしわ寄せを考慮したのか

赤瞳わたしは、蒼い大空から堕ちてくるものが、小さな幸せと考えています」と、語った。

「電磁波に乗って来ない理由を、教えて頂けませんか?」

楓花あたしが想うに、それがアミダくじのようにみえることから、天の邪鬼な幼心が光る赤瞳とうさんには、天使の降臨って想えたんじゃないかなぁ?」

「永遠の少年? ってなるんだろうけど、目指す意味はなんなの」

「誰からも矯正去れないことを望んでいる節があるわ。それが癪に障ることもあるけど、悪気がないから、怒るに怒れないんだよね」

「そうなんですか?」

「格好よく云うと、です。焼きもち妬きは、束縛と嫉妬を正当化しますからね」

「それが情なんだから、しょうがないんじゃないの?」

「情けと云う情は、想い詰めて境界線を越えると、殺人鬼にもなれるのです。だから警察は、男女間の痴情の縺れを第一に考えます。環奈さんが目指す諜報員にしても、我を捨てなくては、一人前と視られませんから、煙たがれる存在となるはずです」

「想いの始まりを話していたのに、赤瞳とうさんはそんなことを考えていたのね」

「自分を捨てなければ、背番号を背負わされた現実に打ちのめされますからね」

「だとしたら、引き返すなら今しかない? なんて云うつもりなの」

赤瞳わたしが云いたいことは、移り変わる時代背景さえも凌駕する、新時代に相応しい諜報員を見付けませんか? と云うつもりでした」

「その面影に、蒼い鳥を重ねたんですね?」

「それで電磁籠を発明したから、洒落にもならないんじゃない。マルちゃんもそのうち、耳が痛いほど聴くはずだから、覚悟しておいた方が良いよ」

「それは勘違いです。守るために必要なことが円満であり、それが宇宙の理に従っているから、従うしか無かったんです」

「だったらそう云わないと、楓花あたしだけでなく、マルちゃんやサキも勘違いしちゃうわよ」

「そうだよね? でも、大空を翔ぶ気持ち良さにも、恐怖感が隠されているはずだから、暗いイメージが定着したのかも知れない。可能性を紐解けば両極端を模索するし、見付かるかもなんて、安直に考えてることが出来るのが人間? って導くかも知れないよね」

「確かに安直かも知れませんが、逆転までいかない転換も必要なわけで、そこを押さえておけば、多少のイレギュラーにも対処できるはずです」

「確かに、視界に捕えることを本文とする人間ですから、確認することに意味があるのですものね」

「確認して善悪を唱えなくても、道理や理に行き着けば、おなじ結果だと想えるよ。それでも確認が必要なのは確かだし、納得出来て当然と思うことは、傲慢を生み出してる可能性を晒しているようなもんだからね」

「納得は必要ありません。人間の納得なんてものはどだい、自己満足の延長線上でしかありませんからね」

 ふたりが侘しい眼をして見詰めていた。うさぎがそれに気付き、想いをぶつけてみることにした。

「今の立ち位置に拘るのが人間ですから、善悪なんてものは所詮、あってないものなんです。だから遠く離れた異国の地で戦争が起きていても、他人事に終らせるんです。そこに哀れみが芽生えたとしても、他人だからしょうがないという不謹慎な言い訳を用意するのが、この国の民族性なんです」

「だとしてもそれが、心の重要性を差し、喜怒哀楽という感性を育むんだよ。一長一短に従わなければ、生きるしがらみにも気付かないし、糧とすることなんて所詮、絵に描いた餅になっちゃうんだからね?」

 うさぎは、楓花に言い返す詞を失っていた。楓花にしても、それで勝ったと自負する気もなく、俯いて終った。環奈が、そんな楓花の肩を抱き、労っていた。



     ニ十六


「蟠りは、詞足らずが招いた結果なんて云ってるけれど、その詞の選択方法がそれぞれなんだから、埋められない溝を掘らないための信頼関係を模索して、努力することが大事なんじゃないの?」

「こういう話し合いが、ソビエト連邦を破壊したとするなら、元祖ジュガシビリさんが殺された理由になりませんかね?」

「そのために反論させたの?」

「音波増速機が破壊去れなければ、チェルノブイリ原発の事故は起きていないと想いましたからね」

「悪人に身を置いた理由ですか?」

「科学者たちは、失敗作を記念に残しますが、隠すために破壊したのか? という疑問が湧きました。何故なら原発事故は、死の雨を降らすと、欧州中の人々が云ってましたからね」

「人を近付けないための方法? だった可能性を持たせるために、悪者を演じたのですね」

「なんちゃってのくせに、格好つけたのね。それで、可能性は上がったとして、奪還出来る目星はついたの?」

「奪還できたとしても不良品ですから、犠牲を祓う意味は生まれません」

「だから英国が、手を出さないのですね。その国に参加してもらう秘策は閃いたのでしょうか」

「概略ですから、海の物とも山の物ともつかないです」

「そうなると、跡形の中に残る証拠品を持ち帰ったとしても、なんの結果を生むわけ無いよね」

「どうして?」

「その暗殺を知る再生された露国の初代大統領は幽閉され、既に生涯を閉じているからよ」

「悪魔の化身と云われる現大統領の思惑が、日の本に晒されることはないのね」

「ひとつだけ方法はありますが、失うものの大きさに比べ、得るものは納得という眼に映らないものです」

「どんな方法なの?」

「科学者は失敗作を記念に残す、と云いましたよね。その所在を知る者は、赤瞳わたしたちの仲間として、実体を手にしました」

「本物の音波増速機が存在する? という偽情報を流すんだね」

「英国とな米国を出し抜くのは爽快ですが、制限を課されることが現実ですから、やるとしたら単独になります」

赤瞳とうさんのことだから、被害者ゼロなんだろうけれど、始まったばかりの諜報活動はどうなるのよ?」

「総理や幹事長よりも、陰がどう出るか? なんじゃないかな」

「陰が非実体なのか確かめられます。ですが、本当の亡霊にされる恐れが付きまといます」

「その場合、幽閉されることはないのでしょうか?」

「環奈さんの疑念は、国としての功績があった場合です。世間よりも簡単に殺人を犯せる塀の中ですから、安全な場所とは云えません」

「だったら、この世で一番安全な結界に逃げ込むしかないんじゃないの」

「忘れたんですか? この世が相対性理論に従っているなら、結界すらも顕にするものが存在します。今はまだたどり着けないそれを、赤瞳わたしの甦りで晒して要るんですよ」

「どういうことよ?」

「悪魔に堕ちる前は、神だったわけですから、つるぎと思念の応用で作られたのが結界ですから、切り裂くための剱の存在に気付いたなら、訳もなく結界はなくなります。その危惧の観点から、偉人たちに降臨が出来るように投げ掛け続けて要るんです」

「だとしたなら、人間の体内で殺戮が起こります。心を病む人間たちに、耐えられるとは存外ぞんがい 想えません」

赤瞳とうさんは、こういう用心の推奨者だから導くけれど、たどり着かないためのカラクリを仕込むから、気にしないで良いよ、マルちゃん」

「カラクリなどと茶化す辺りが、うさぎさんの真骨頂なのですね」

「手本とするのが、神々しかいませんから。ですが、循環の手本だとしたら、カラクリも所詮、にわか科学と同じですよね」

「そんな時のために、阿修羅神たちが存在するんじゃないの?」

「阿修羅神?」

「千手観音様を始め、風神様に雷神様が居ることにも、意味があるはずだからね」

「煙に巻かれる訳なんだね」

「それを旋毛つむじに巻けば、竜巻やハリケーンに成るでしょう」

 楓花の機転が、環奈を丸め込んでいた。うさぎは、老いては子に従え? を実感していた。

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