ジャスパーとジア

「いや〜、たくさん買っちゃたね。ジア、重くない?」


「はい。大丈夫です」


彼の作る人形には多くの材料が必要となる。

なんといっても人間と同じ大きさのもの人形を作るのだから。


「…そういえば、近くに『アレク』がいたね」


「はい。近くの商家で働いているはずです」


アレクは彼が作った生んだ人形だ。


「少し見に行ってみようか」


「はい。わかりました」


彼らは道を進む


「……行きより少し騒がしいね。何かあったのかな?」


「…その質問への回答は持ち合わせておりません」


「……そっか。とりあえず少し急ごう」


「はい、わかりました」


彼らは早足に道を進む。

騒ぎの現場に近づくほど、人は多くなってくる。

それと同時に何やら焦げ臭い匂いが鼻を掠めた。

少し向こうに煙が見えた。


「…すみません。ちょっと通してください」


彼らは人波をかき分けていく。

視界が開けた先には……


「……アレク」


……炎が上がっていた。

周りと比べると大きな建物からたくさんの煙が上がっていた。

周りが消火を始めているが消える気配はまだない。


『何があったんだ』『早く消火しろよ』『やってるけど消えないらしいよ』『中にいた人は無事かな』『ほとんど出てきてるみたいだけど…』『えっ、誰か残ってるの』『なんか「人形」が残ってるらしいよ』『なんだ人形か』『なら大丈夫か』『建物が崩れない限り壊れないだろうしね』『それよりなんで火事なんて起きたの』『なんか………………………………


彼は駆け出していた。

炎の燃え上がる建物に向かって、


「あっ、ちょっと君!」


静止の声も振り切って、


「ジアはここで待ってて!命令だ!」


「…はい」


アレクを助けに行った


◯-◯-◯


「アレク!ゴホッ、マスター権限を発動する。ヒュー、今すぐここから急いで脱出しろ!ゴホゴホッ」


僕は咳き込みながら命令を下す。


「はい、わかりました」


アレクは走って出口を目指す。


-僕も急がないとな


「ゴホッ」


-あれ、視界が…


バタンッ


-長く居過ぎたかな…


ガタン


-アレクは出られたかな…


バタバタバタッ


-このときばかりは人形ジアが僕の命令に従ってくれることが嬉しいけど…


「……パー……」


-最後に叶うなら…


「…ス…様、ジャ」


-ジアが感情を得るのを見たかっ……


「ジャスパー様!」


ジアが僕を背をっていた。


「…な……んで、ゴホッ、ジア…が、カハっ」


-外で待ってたはずじゃ………


「今、お助けします!」


-命令はどうして………


「私は!あなた様の『人形』ですから!」


この言葉を最後に僕の意識は落ちていった。


◯-◯-◯


『本日は、風が強く涼しいためコートを用意いたします』


『うん、よろしく頼むよ』


-なぜ、マスターは笑うのだろう


それは、マスターが楽しいと感じているからだ。


***


『……ジアは「付喪神」って信じるかい?』


『ジャスパー様が信じろというのならば』


『……そっか』


-なぜ、マスターの声が沈んだのだろう


それは、マスターが悲しいと感じているからだ。


***


『ジアはここで待ってて!命令だ!』


『…はい』


-なぜ、私はすぐマスターに応えられなかったのだろう


それは、、、



私が、マスターに危険な場所にいって欲しくなかったから?



気づくと私の体は動いていた、


「…あっ、何してるんだ!君も!危ないじゃないか!」


静止する声を無視して、


「離してください!」


マスターからの命令をも無視して。


「ジャスパー様…」


-マスターがいなくなってしまうかもしれない


「ジャスパー様、ジャスパー様…」


-消えるはずのない視界が、消えたような気がした


「ジャスパー様!」


-止まるはずのない思考が止まったような気がした


「今、お助けします!」


-これが『不安』というものなのだろうか


「私はあなたの『人形』ですから!」


-これが『感情』というものなのだろうか


◯-◯-◯


あの後、建物の中から出てきたアレク、ジアは大きな損傷怪我も無かった。

しかし、ジャスパーは気を失っていたため、病院で治療を受けた。

目を覚ました彼は多くの人たちから叱られたが、後遺症もなく退院することができた。


-『人形』


「おはようございます。ジャスパー様」


つい先日、命の危機が起きたとは思えないようないつもの光景。


「おはよう。ジア」


いつもより眠そうに彼は言った。


「今日もよろしく頼むよ」


-マスターに造られた『道具』


「はい、ジャスパー様」


-この身も、心も、私の全てはあなた様のものです

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*ジア* 孤野恵 志穂 @konoeshiho

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