平凡薬師様のウラの顔

@yukino_touka6375

プロローグ

チリン…チリン

ドアベルの音が店内に鳴り響くと、待っていたとばかりに薬研の重い音がピタリと止む。

「いらっしゃい。今日はどうしたんだい」


常連客は何時ものさ、と言い遠慮なく近場の椅子にドカリと座る。それ以上は何も言わずに生薬と天秤を手に取る薬師は、少々風変わりに見える。着ているのはただの白衣では無く、中国王朝を思わせる白い漢服を模したもの。少し高めの位置で雑に結ばれた髪はまさに白銀、と呼ぶに相応しい色をしている。そして、楽しそうに手に取った生薬を見つめる瞳は

───燃えるような朱であった



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