2-9
みのるが目覚める前日。
鬼々はみのるの入院している病院にいた、志々怒の元にやってきていた。
「無理を承知で聞きたいことがある。こやつの、みのるの記憶を一部消去することは出来ぬか?」
「うーん……あの子がやってないとはいえ、死人出てるしなー」
志々怒は頭を悩ませていた。
志々怒としてもそうするつもりではいるが、問題は死体の後処理だった。
悩んでいるところに、救世主が現れた。
「志々怒さん!!!」
「うわぁっ!!って堺(さかい)君か、びっくりしたー」
「田崎(たさき)さんに言われて来たんです!!現場の処理をするように言われてきたんですけど」
田崎と言うのは、志々怒の知り合いで、堺の上司である。
志々怒は今後の事もあるので、堺に鬼々を紹介した。
「すごい!吸血鬼って言うのがいるんですね!」
堺は目をキラキラさせている。
志々怒は堺に処理を頼みつつ、他にもなにかあるのでは?と尋ねる。
「あ、そうだった!記憶処理班も来てるんですが、あの子にしとけばいいんですかね?」
「そうね。まあ処理箇所についてはその吸血鬼さんと相談する事になるから僕も同席するよ。あと」
「あの保護団体とか言うのですよね?あれは道央に伝えておきましたけど。なんとかしてくれるんじゃないでしょうか?」
「さっすが堺くん」
この状況に鬼々はドン引きしていた。
「……お主ら何者なんじゃ…」
「「異形滅師でーす」」
その後は道東の異形滅師と連携した病院で一部の記憶消去と記憶の改変を施してもらい、そのまま怪我などの治療も込みで入院が継続している、というのが現在の状況である。
***
「みのるはけがもしておる。もう少し入院じゃ」
「…そっか」
「居なくなると思ったか?安心せい。今はそばにいてやる」
「……今だけですか?」
「病人は大人しくしておれ」
鬼々は顔を真っ赤にして、返答する。
コンコン
再びノック音が聞こえ、知らぬ人物が入ってきた。
「兄さん、みのるさんは大丈夫?」
「に、兄さん!?」
「おお、来夢(らいむ)ではないか。今目を覚ましたところじゃ」
「そっか、よかったよかった」
来夢、と呼ばれた小さな男の子は、困惑するみのるを他所に鬼々と会話を続ける。
「あの…」
「ああ、みのるすまんな。こいつは来夢。わしの弟じゃほれ来夢、挨拶せい」
「みのるさんすいません、挨拶が遅れました。俺は弟の来夢といいます。兄がいつもお世話になっています」
「あ、いえこちらこそ」
横から誰がいつも世話になっているだと!と言う鬼々の声が聞こえたが、スルーした。
「あまり無理なさらないでくださいね」
「ありがとうございます」
「そうじゃ、来夢お前どうして病院におるのじゃ?」
「あれ、言ってなかったっけ?先生が病気で入院しててそれの見舞い」
「「先生?」」
みのると鬼々の声がシンクロした。
「そ。たまーーーにその人から血貰ってんの。いい歳したじぃさんなんだけど…。こんな言い方したら宝が怒るな。もう先が長くないみたいでね。世話にはなったし見届けてあげようと思って」
(宝…?もしかして……)
兄の名前と同名の人もいるのかと思ったが、まさかそんな事があるのだろうか。
いや、まさか。
「あの…」
「あ、ごめん。帰ってこいって連絡来てるから戻るね。みのるさんお大事に!」
そう言って来夢は慌てて戻って行った。
「鬼々さんにあんな小さい弟さんがいたんだね」
弟について尋ねてみる。
「ああ、あれは自分で小さくなっておるだけじゃ。わしには分からんが、色々と都合が良いらしいぞ」
無駄に体力を使うだけだと言うのに、と鬼々が呟く。
吸血鬼という種族が全く分からないが、鬼々にもそういった事が出来るのかもしれない。
もしそれが出来るなら、そんな鬼々を見てみたいと思った。
「そうじゃ」
カチッとカギの閉まる音がして、鬼々がみのるのベッドに跨ってくる。
「みのるの目が覚めるまで我慢してやったんじゃ。吸わせろ」
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