ノーマルな日常3
『ドンッ、ドンドンッ!ドンドンドンッ!』
朝にはふさわしくない騒音が聞こえてきた。外で工事でしているのかと窓から確認してもそこにはいつもの道路。
徐々に覚醒してきた頭でよくよく考えてみると音が聞こえてくるのは隣からだ。俺は急いで玄関を出て隣に向かおうとした。
すると、聞き覚えのあるような声色が聞こえてきた。
「・・・ぇて。お・・ぁよ」
急いで部屋から出るとそこにいたのは、自分の取引相手である雅さんだった。
「え!?」
「開けて~。
雅さんはこちらに気づかず、ずっと八雲さんの部屋をノックしている。
明らかにいつものクールな雅さんとは違い、目が血走っていた。なんというかとても怖い。と、雅さんの眼がこちらを向いた。本能的にやばいと感じすぐに部屋に入ろうとするが、声をかけられてしまった。
「あれ、あなたは」
「あはは、お、おはようございます」
「おはようございます。ところでなぜここにいるんですか?」
「返答によっては殺す」とでも言い出しそうな目でこちらを覗いてくる。
「こ、ここに住んでいるんです。この部屋です」
急いで自分の部屋を指さして説明する。
「そうだったんですか。実は私の妹もこっちの部屋に住んでいるんですよ。ご存じでしたか?」
「八雲という苗字は珍しいのでもしかしてとは思ってましたが、まさか本当にご家族だったとは」
「そうなんですよ!すごく仲がいい姉妹で刹ちゃんたら私のことがすごく好きなんですよ」
「刹?」
「ああ、私の妹、つまりはこの部屋の主の名前ですよ」
八雲さんの名前が「刹」だというのを初めて知った。すると、扉がかすかに開いた。
「・・・こんな朝から何してるの二人とも。仕方ないけど、周りに迷惑だから入って」
「あ、やっと出てきてくれたんだ。今日もかわいいね刹ちゃん」
そういうとするすると入っていき、八雲さんに抱き着いた。
「ハァ、ハァ、すべすべな肌、つやつやな髪、ハァ、ポカポカな体温。すぅー、いい匂い」
「ちょ、ちょっと待って。見られてるから。見られてるから」
流れで入ってきてしまったが、こんなすんなり八雲さんの部屋に入ってよかったのだろうか。
目の前には、美少女と美女が絡み合っている。そこだけ聞くと変な妄想をしてしまいそうだが、八雲さんが結構真面目に嫌がっている。
「あの、すみません。部外者の俺が言うのもなんですけど、そろそろ放してあげたらどうですか?」
「なんで?」
「いや結構嫌がってるので」
「どこが?」
「いや、あ」
「ねえどこが?どこが嫌がってるの?どこがどこがどこが、ねえ、どこが。刹ちゃんはお姉ちゃんのこと、好きだよね」
そういった雅さんの眼はこちらを見ていなかった。
「お姉ちゃんあのちょっと、落ち着いて」
その言葉すら雅さんには届いていなかった。
もうヤダこの空間。抱き着かれながら器用にタバコ吸ってる八雲さんに、血走った目でぶつぶつ言ってる雅さん。それになぜかここにいる本当に関係ない俺。あのかえっていいですか。マジで。
この後仕事あるし早く出たい。
「それでは、仕事があるので」
「あ、君!今日の夜は!?」
「あ~わかりました。頑張ります」
そう言って八雲さんの部屋をあとにし、急いで着替えて仕事に向かった。
八雲さんについてさらに謎が増えた。
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今日もいつもの時間に仕事が終わり無事帰宅できた。部屋の明かりをつけ、ネクタイをほどきながらベランダへ向かう。リビングの机にはタバコとライター。
カーテンを開け、ベランダに出ると壁一枚隔てた向こうにはもう先駆者がいた。その先駆者が見えるところまで移動した。部屋の明かりに照らされ、月を見上げる美少女にまたも見とれてしまった。
「お疲れ様です」
「うん、お疲れ」
横目でこちらを伺ったその横顔は美しかった。コミュニケーションを取り始めてからあまり時間は立ってないとはいえ、毎回見とれてしまうのはさすがに恥ずかしい。
そんなことを考えながら、タバコに火をつけた。
「・・・今朝はごめんね。あれお姉ちゃんでさ、自分で言うのも恥ずかしんだけど私のこと好きらしくて」
「まぁ、見てたら伝わってきましたよ。ちょっと激しいかもしれないですけど」
「ふふ、そうかもな」
雲一つない夜は月が明るいほど暗さが増していく。
中身のない会話は一本吸い終わるほどの短い時間でも十分すぎた。
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どうも「ガウテン」です。
次はもっと主人公と八雲さんの絡みを見せたいですね。
では、また。
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