第4話 友人Aの前世③
「貴方は小さい子供を見ると胸が張り裂けそうになるような気持ちになる事があるわよね? それも生まれて数ヶ月くらいの男の子限定で」
友人Aは図星だったようで、目をパチパチと瞬きさせながら「は、はい。あります……」と答えた。
「貴方が芸妓をやってる時、お客の子供を一人産んだみたい。当時は妾の子は珍しくなかったようだし、産んだのが男の子だったから、その子は父親に引き取られたわ。その時の影響も色濃く残ってるみたいね」
友人Aは心当たりがあったのか、涙目で何度も何度も頷いていた。
恐らく、本人にしか分からない心のシコリがあったのだろう。浮かない表情だったが、原因が分かり「……教えて下さってありがとうございます」と答えていた。
側で一部始終を聞いていた私は二人が一通り話し終わった後、その霊媒師に「あの……どうして、名前だけでそんな事が分かるんですか?」と質問してみた。
すると、霊媒師は彼女の名前にある『菜』に秘密があるのだという。
『菜』という文字は〝草かんむり〟に〝爪〟に〝木〟が組み合わさってできている漢字である。
霊媒師曰く、彼女の名前を読んで一番に浮かび上がったのが、〝爪〟が〝木〟を引っこ抜くイメージだったそうだ。そこから過去にアクセスし、その人の人生にどう影響を与えているのかを見るのが得意なんだそうだ。
「死んで生まれ変わったらリセットじゃない。自分のやった事には必ず責任がついて回るわ。次の人生に何かしらの影響を及ぼすケースが殆どよ。〝因果応報〟という言葉があるけど、友人Aさんのケースはまさにそれね」
かけられた言葉は厳しいものだったが、自分に付けられた名前も含めて全てが繋がっている――。
そう考えると、私も清く正しく真っ直ぐに生きようと思った出来事となった。
因果応報〜前世で犯した悪行が今世に及ぼす影響〜 梵ぽんず @r-mugiboshi
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