13章 新たな出会いと広がる絆

 キサラ、タクミ、ミナミ、そしてアキラの四人は、いつものように仲良く一緒に下校していた。

 春の陽気に誘われて、彼らの会話は弾む。


「ねえねえ、キサラ。今度の休みに、みんなでカラオケに行かない?」


 ミナミが楽しそうに提案する。


「いいね! ボク、新しい曲を練習したいんだ」


 キサラの瞳が輝く。


「また女形おやまの曲か?」


 タクミが冷やかすように言う。


「違うよ、今度は現代風のポップな曲なんだ。アキラくんに聞いてもらいたいんだよね」


 そう言って、キサラがアキラに視線を送る。

 アキラは少し照れくさそうに微笑む。


「キサラ先輩の新曲、楽しみにしています。僕も負けられませんね」


 そんな何気ない会話を楽しみながら歩いていると、突然、真剣な表情の女の子が彼らに向かって走ってきた。ボブカットが印象的な、ボーイッシュな雰囲気の子だ。制服のバッジから、一年生だとわかる。

 女の子はキサラの前で一旦立ち止まると、いきなり土下座をした。


「キサラ先輩、お願いです! あたしにを教えてください!」


「「またこの展開ぃーーーー!?」」


 タクミとミナミは驚きの声を上げる。


「男の子のすべてって、ことはやっぱり……」


 タクミがつぶやく。


「宝塚とか……そういうこと?」


 ミナミが首をひねる。

 一方、キサラはというと、状況が飲み込めずにポカンとしている。それでも無邪気な表情は相変わらず可愛い。


「あっ、すいません、言葉足らずでした! キサラ先輩、お願いです! !」


 少女は慌てて訂正する。


「「ですよねぇーーーー!」」


 再びタクミとミナミの大声がハモる。

 その時、アキラがつい、と前に出る。


「ねえ、君。名前は?」

「え……ミ、ミサキです……」


 少女はつかえながら答える。

 キサラの後ろにいたアキラに気づいていなかったらしく、キサラ同様、性別を超越した美しさを持ったアキラに頬を紅潮させている。


「そう、ミサキさん。僕、きっと君の力になれると思うんだ。そうですよね、キサラ先輩、ミナミ先輩、タクミ先輩★」


 アキラがウィンクする。

 三人は顔を見合わせて頷く。


「そうだね、確かにミサキさんにはアキラくんの経験が役立つかもしれないね」


 ミナミが同意する。


「ここじゃ話しにくいから、どこかでゆっくり話そう。ミサキさん、時間ある?」


 アキラが優しく尋ねる。


「は、はい……」


 ミサキは夢見るような表情でアキラを見つめる。まるで恋する乙女のようだ。

 ミサキの視線はすっかりアキラに釘付けだ。

 まるでキサラの存在を忘れてしまったかのように、ふらふらとアキラの後をついていく。


「あれ? ボク、もしかして振られちゃった?」


 キサラが無邪気に笑う。


「まあ、若い子の恋路は邪魔しちゃいけないからね」


 ミナミが意味ありげに言う。


「おい、ミナミ。お見合いの席のおばちゃんみたいなこと言うなよ」


 タクミがツッコむ。

 三人は顔を見合わせて、大笑いする。

 アキラとミサキを見送りながら、キサラは心の中でつぶやく。


(アキラくん、ミサキさんの夢が叶うように、サポートしてあげてね)


 タクミとミナミも、アキラとミサキの姿を温かく見守る。

 性別の垣根を越えて、互いの夢を応援し合う。そんな彼らの友情は、新しい出会いとともに、さらに広がっていく。この先、いったいどんな未来が私たちを待っているだろう。

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