12章 運命の再会!

 中学校の文化祭当日。そのメインイベントは、なんと去年に続き、キサラのソロライブだ。キサラファンクラブの熱烈な希望により、今年も開催が実現したのだ。


 客席は超満員。キサラを応援するファンたちで埋め尽くされている。ステージ上には、キラキラと輝くスポットライトが降り注いでいる。


 いよいよライブがスタート。去年同様真っ赤なドレスに身を包んだ、女の子のキサラがステージに登場する。客席からは、大歓声が沸き起こる。


「みんな、こんばんは! 今日は来てくれてありがとうー!」


 キサラが元気いっぱいに叫ぶ。


 スポットライトを浴びて、キサラは歌い始める。彼女の甘く伸びやかな歌声が、会場中に響き渡る。


「♪夢を追いかけて、駆けていこう~♪」


 キサラは優雅なステップを踏みながら、時にはウィンクを決めて観客を魅了していく。そのキュートな笑顔に、観客席のタクミは胸をときめかせる。


「相変わらずキサラは輝いてるなぁ」


 タクミが感嘆の声を漏らす。

 一方、舞台袖で見守るミナミの胸中は複雑だ。

 嬉しさと、少しの寂しさが入り混じっている。


(キサラ、あなたはいつだってみんなの視線を集める。私はその隣で、あなたを見守るだけ……あたし、それでいいのかしら……)


 ミナミは自分の胸に宿りつつある名状しがたい感情をまだ疼きとしてしか認識できていなかった。


 ライブは大盛り上がり。フィナーレの曲が終わり、割れんばかりの拍手が会場を包む。


「アンコール! アンコール!」


 観客席から、声が飛ぶ。

 やがて会場はゆっくり暗転し、漆黒の闇に包まれる。


 突然ステージに一筋のスポットライトが差した。


 現れたのは、美しい和服姿の「女性」。

 優雅な立ち振る舞いで、キサラの隣につつ、と歩いていく。


「キサラさん、そして素敵なお客様。本日は、私からも一曲、披露させてください」


 その「女性」が口を開くと、会場がざわめく。

 キサラは驚きを隠せない様子。

 タクミとミナミも、目を丸くしている。

 あれは誰だ?


 ……そう、その「女性」こそまさにアキラだったのだ!

 

 彼は見事に女形として、キサラの前に現れたのである。

 キサラ達にとっては完全なサプライズだ。


 アキラの歌声が、会場に響き渡る。

 艶やかで、しなやかな、まさに女形の歌声。

 それはまるで、観客を時空を超えた花の都へと誘うかのようだ。


 キサラも我に返ると、アキラと見つめ合い、にっこりと微笑む。

 そして、二人の歌声が重なり合う。


 男でも女でもない、二人だけの世界。

 性別を超越した、魂の饗宴。


「♪夢を信じて、自分を信じて、未来へ羽ばたこう♪」


 二人の歌声は、観客一人一人の心に染み渡っていく。


 歌い終えた二人に、割れんばかりの拍手が送られる。タクミとミナミも、感動で胸がいっぱいになる。

 ステージ上で、アキラがキサラの手を取る。


「キサラ先輩、今日はご一緒できて光栄です。先輩のおかげで、僕は夢を叶えることができました」

「ううん、アキラこそ、素晴らしかった。アキラが女形になれたのは、アキラの努力のおかげだよ」


 二人は、固い握手を交わす。まるで、これからの約束のように。

 客席からは、スタンディングオベーションが巻き起こる。キサラとアキラ、二人のアイドルの誕生を、みんなが祝福しているのだ。

 タクミとミナミも、二人に駆け寄る。


「キサラ、アキラ、おめでとう!」


 四人は、抱き合う。

 性別なんて関係ない。大切なのは、互いを認め合い、高め合うこと。

 そんな四人の友情が、ステージを、会場を、世界を照らし出す。

 半年前、女形になる夢を抱いてキサラの前に現れたアキラ。あの時の彼は、まだ夢の途中だった。

 しかし今、見事に女形として花開いたアキラがここにいる。キサラとの再会を、こんなにも劇的に飾るなんて。

 まさに運命の再会。二人の魂が、ステージの上で響き合った瞬間だった。

 タクミとミナミは、そんな二人を見守りながら、改めて思う。

 これから先も、四人の絆は、変わることなく続いていくのだと。どんな時も、互いを支え合い、励まし合う仲間でいられると。


 キサラとアキラの歌声が、そんな四人の未来への誓いのように、会場に響き渡るのだった。

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