10章 - 永遠の絆 ~変わらぬ心、輝く未来~
春の柔らかな日差しが校庭に降り注ぐ4月のある日、キサラ、タクミ、ミナミの三人は、新調した制服に身を包んで中学二年生としての一歩を踏み出していた。
「ねえねえ、二年生になっても三人一緒で良かったね!」
キサラの明るい声が、桜の花びらが舞う中、心地よく響く。
今日のキサラは男の子の姿。少し大きめの制服を着こなし、相変わらず少年のような無邪気さを漂わせている。
「ああ、本当だな」
「そうね。私たち、これからもずっと一緒よ」
タクミとミナミも、穏やかな笑顔でキサラに頷く。
三人で並んで歩く姿は、一年前とほとんど変わらない。しかし、その歩みには確かな成長が感じられた。
教室に入ると、クラスメイトたちから次々と声がかかる。
「キサラ! 文化祭のライブ、本当に素晴らしかったよ!」
「キサラちゃん、今年も歌ってくれるよね?」
キサラは照れくさそうに頭を掻きながら、嬉しそうに応える。
「ありがとう! うん、もちろん歌うよ。みんなも一緒に歌おうね!」
その言葉に、クラス中が笑顔に包まれる。
昼休み、三人はいつものように屋上で弁当を広げていた。
「ねえ、覚えてる? 去年の今頃」
ミナミが、懐かしそうに言う。
「ああ、キサラが突然女の子になって、俺たちを驚かせたんだよな」
タクミが苦笑しながら答える。
「えへへ、ごめんね。でも、あの時から私たちの冒険が始まったんだよね」
キサラは少し照れくさそうに、でも嬉しそうに言う。
「そうだね。あれから色んなことがあったけど……」
ミナミの言葉に、三人は去年の出来事を思い出す。
文化祭でのソロライブ、キサラの葛藤、そしてそれを乗り越えた感動のステージ。
「キサラ、お前は本当に強くなったよ」
タクミが真剣な表情で言う。
「うん、私も同感よ。自分らしさを貫くキサラの姿に、私たちも勇気をもらったわ」
ミナミも優しく微笑む。
「え、えへへ……」
キサラは顔を赤らめながら、でも嬉しそうに二人を見つめる。
「でも、それは二人がいてくれたからだよ。ボクは二人がいるから、強くなれたんだ」
キサラの言葉に、タクミとミナミも顔を赤らめる。
「これからも、三人で一緒だよね?」
キサラが、少し不安そうに尋ねる。
「当たり前だ」「もちろんよ」
タクミとミナミが即座に答える。
「俺たちは、もう家族みたいなものだからね」
タクミの言葉に、ミナミも頷く。
「そうね。性別なんて関係ない。キサラはキサラ。私たちの大切な友達よ」
キサラの目に、小さな涙が光る。
「ありがとう……二人とも」
その瞬間、キサラの体が光に包まれ、女の子の姿に変わる。
「あ……」
「ほら、これがキサラなんだ」
タクミが優しく微笑む。
「そうね。これがキサラよ」
ミナミも嬉しそうに頷く。
キサラは照れくさそうに笑いながら、二人を抱きしめる。
「大好き……二人とも大好き!」
三人の笑い声が、春の空に響く。
これから先も、きっと色々なことが起こるだろう。でも、三人で一緒なら、どんな困難も乗り越えられる。そう、三人は確信していた。
キサラ、タクミ、ミナミ。
性別や外見が変わっても、心の絆は決して変わらない。彼らの物語は、まだ始まったばかり。これからも、自分らしさを大切にしながら、互いを支え合い、成長していく。
春風が三人の髪をやさしく撫でる。
その風に乗って、彼らの歌声が遠くまで届いていく。
♪好きなことをしよう、好きな人でいよう
素直なままの自分でいよう
男の子? 女の子? そんなの関係ない
大切なのは、この心♪
キサラの歌声に、タクミとミナミも声を重ねる。三人三様の声が、美しいハーモニーを奏でる。
これは終わりではなく、新たな始まり。
彼らの物語は、これからもずっと続いていく。
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