6章 - 煌めく汗、揺れる想い ~文化祭ダンスの熱演~

 放課後の体育館に、軽快な音楽が響き渡る。文化祭の出し物準備で、キサラたちのクラスはダンスパフォーマンスを披露することに決まっていた。

「5,6,7,8!」

 キサラの掛け声とともに、女子たちが一斉に動き出す。その中心で踊るキサラの姿は、まさに輝いていた。

 今日のキサラは女の子の姿。美しい髪をポニーテールに結い上げ、額に光る汗が妙に色っぽい。練習用の衣装は、ピンクのタンクトップにショートパンツ。その姿は、普段男子の制服を着ているキサラからは想像もつかないほど華やかだった。

 ちなみに最近は自分でもどうなると性別が変わるのかわかってきたらしく、キサラが急に女の子になったり、男の子になったりすることは減っていた。

「キサラちゃん、すごい! どうしてそんなに上手に踊れるの?」

 クラスメイトの女の子が感嘆の声を上げる。

「えへへ、ありがとう。でも、まだまだだよ。みんなで頑張ろうね!」

 キサラは照れくさそうに頭をかきながら、爽やかな笑顔を見せる。

 その横でミナミも懸命に踊っていた。黒髪をショートカットにしたミナミは、キリッとした表情で動きを確認している。

「ミナミちゃん、そこの動きはこうじゃない?」

 キサラがミナミに近づき、優しく指導する。

「あ、そっか。ありがとう、キサラ」

 ミナミは少し頬を赤らめながら、キサラの動きを真似る。二人の距離が近づくたびに、ミナミの心臓が高鳴る。

 一方、体育館の端でダンボール箱を運んでいたタクミは、キサラたちの様子を目で追っていた。

「はぁ……」

 小さなため息がこぼれる。

 タクミの目は、キサラのしなやかな動きに釘付けになっていた。

 キサラが腰を大きく動かすたび、その胸が揺れる。

 タンクトップの胸元から、うっすらと谷間が見えそうで見えない。

 タクミは思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

「くっ……」

 タクミは顔を赤らめながら、必死に目をそらそうとする。

 しかし、キサラの魅力的な姿から目が離せなかった。

「よーし、みんな! 休憩しよう!」

 キサラの声で、女子たちがほっと一息つく。

「タクミ、ありがとうね。手伝ってくれて」

 汗を拭きながら、キサラがタクミに近づいてくる。

「あ、ああ……れ、練習頑張ってんじゃん」

 タクミは慌てて答える。

 キサラの汗ばんだ肌が、妙にセクシーに感じられて、心臓が早鐘を打つ。

「ねえねえ、タクミ。私たちの踊り、どう?」

 キサラが無邪気に尋ねる。

 その表情は天真爛漫、まるで天使のように輝いていた。

「え、ああ……すごく、その……」

 タクミが言葉に詰まっていると、キサラが不意に投げキッスを決めた。

「えっ!?」

 タクミは驚いて後ずさる。

「あはは、タクミったら、そんなに慌てなくてもいいのに」

 キサラはくすくすと笑う。

 その仕草が、妙に色っぽく感じられて、タクミの顔がますます赤くなる。

「もう、キサラ。タクミをからかっちゃダメよ」

 ミナミが呆れたように言う。しかし、その目にはどこか寂しそうな影が浮かんでいた。

「えー、でもタクミの反応ってばいちいち面白いんだもん」

 キサラは無邪気に笑う。

 くっ……。天使のような悪魔の笑顔とはこのことか。

 しかしその笑顔に、タクミもミナミも思わず吸い込まれそうになる。

「さ、みんな! 休憩終わり! 後半も頑張ろう!」

 キサラの元気な声で、再び練習が始まる。

 音楽が流れ、キサラたちが踊り始める。その中でも、キサラの動きは群を抜いていた。 しなやかな体の曲線、優雅な手の動き、キレのある腰の動き。それらが一体となって、まるで魔法のような魅力を放っている。

 タクミは、キサラの踊りに見とれながら、ふと考える。

(キサラは、男の子の時も女の子の時も、こんなに魅力的なんだ……やっぱりそれはキサラがキサラだからなんだな……)

 その時、キサラとタクミの目が合った。

 キサラはにっこりと笑顔を向け、今度はウインクを決める。

「うっ……」

 タクミは思わず目をそらしてしまう。

 しかし、心の中では嬉しさと戸惑いが入り混じり鼓動が速くなっていた。

 一方、ミナミはキサラとタクミのやり取りを横目で見ながら、複雑な表情を浮かべていた。

(私は……キサラのことを……どう思ってるんだろう……)

 ミナミの中で、何かが芽生え始めていた。

 練習は夕暮れまで続いた。汗だくになりながらも、みんなの表情は充実感に満ちていた。

「お疲れ様! みんな、すっごく良くなってきたよ!」

 キサラが明るく声をかける。

「キサラのおかげよ。あなたがいなかったら、ここまで上手くならなかったわ」

 ミナミが優しく微笑む。

「えへへ、そんなことないよ。みんなが頑張ったからだよ」

 キサラは照れくさそうに頭をかく。その仕草が、妙に色っぽい。

「よし、じゃあ明日も頑張ろう!」

 キサラの声に、みんなが元気よく応える。

 体育館を出る時、夕陽がキサラの横顔を赤く染めていた。その姿は、まるで絵画のように美しい。

 タクミとミナミは、そんなキサラの後ろ姿を見つめながら、それぞれの胸の内に去来する想いを感じていた。

 この文化祭の出し物が終わる頃には、三人の関係にも何か変化が訪れるのかもしれない。そんな予感が、夕暮れの空気の中に漂っていた。

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