第四話 ナツメ・アデム

目が覚めるとふかふかの布団の上にいた。辺りを見ると木造でできた家にいた。


「もうしばらく安静にしといた方がいいぞ、まだ傷は塞がっていないからな」

黒髪の長髪に、少し筋肉質で且つスタイルは抜群だ。おまけに美人でそこに強さと母性を感じさせる。


(ここは天国か?もしかして俺は死んだのか?)


「…いやここは森の中にある一軒家だ」


(あれ、俺の声が聞こえるの?)


「ああ、私も驚いている。モンスターと会話ができる経験は私も初めてだ…」


本来、モンスターと人間がコミニケーションはとれない筈だが、もしかしたら俺が元人間だからか?


「でもこうして会話ができることはいい事だな。そういえば、身体のサイズが大きくなってないか?塩分でも抜けたか」


(街の人達に塩を投げられたんだ。塩はナメクジにとって最も苦手とするものだから…)


「たしかエムル街で大きなナメクジがいるって噂が流れてたな。それは君だったのか」


「……」


「……」


しばらく沈黙が続く。

彼女の整った顔をじっと見る。彼女も俺の顔を見る。何かドキドキする。

ガバッ


(!!?)


突然抱き着かれた。彼女の固い筋肉と柔らかい肌、そして豊満な胸の感触を感じる。年頃の青年には刺激的だ。


「愛くるしいな、君は!!」


(今この人は何言った!?俺が愛くるしい!?)


「ああ、そうだ君は愛くるしい!このずんぐりむっくりした体型にキュルルとした

顔!」


何だかムズ痒い。人生で褒められたことなんて初めてだ。


「そういえば君は名前はあるのか?」


(タカナシ タカシ。あなたは?)


「ナツメ・アデム。年はピチピチの28歳だ」


「タカナシ タカシ か…。まるで人間みたいな名前だな」


(元人間なんだ…。でもある日、ナメクジになった。原因は分からない…)


「何、人間だったのか!?人間がモンスターになるケースは聞いたことない」


そうなのか、何か分かればいいと思ったが。


「…さ、そろそろご飯ができる頃だ!ナメクジだけど、元人間なら普通の飯を食べるだろ?」


そういうと、ご飯を用意してくれた。

パンと肉に豆スープ、フルーツと食欲を刺激するモノが目の前に並ばれた。


「遠慮なく食べてくれ!」


異世界に来て以来、まともな飯。俺は夢中で頬張りあっという間に平らげた。


(ご馳走様、美味しかったよ)


「そうか、なら何よりだ」


その後は風呂に入り、ナツミさんが身体を洗ってくれた。自分では洗えないからな。

ふかふかの布団に入り、ナツメさんと少し会話をする。


「明日は、食料を買いに街に下りる。一緒に買い物に行くか?」


街は俺の悪評が広まってる。あまり行きたくない。


「大丈夫だ。私もいるんだから不安がることはない」


ナツメさんに言われると安心する。


(分かった。行く)


「そうか、明日が楽しみだな!」


ナツメさんは楽しそうにし、俺の隣に布団に入った。

誰かと寝るなんて経験は初めてだ。親は俺に興味を示してくれなかった。


(お休み、ナツミさん)


「お休み、タカシ」


俺はあっという間に眠りに落ちた。

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