第三話 小男
「ガア――――!」
「よしよし落ち着け、ラガス。間違えて殺すなよ。じっくり痛ぶるんだ」
大きなカラスモンスターの上に醜い130センチ程の小男が被虐的な笑みを浮かべていた。
(くそっ!今度はなんだ!?)
塩を撒かれ体力が大きく削られている。だがこのまま燻るわけにはいかない。
早く逃げなければ。
「ラガス!ウィンドフだ!!」
怪鳥は羽をはばたかせて風を起こした。
「ギャッ!」
俺は大きく飛ばされた。只の風だが地面に叩きつけられた。それだけで大ダメージだ。
(う~~。駄目だ。身体が思う様に動かない…)
「何だもうギブか?もっとあがけあがけ!!」
小男がギャーギャーと騒いでるが何を言ってるのか分からない。聴力も弱ってきてい
る。
「ラガス突きだ!!」
影が濃くなる。本能的に危機感を感じ、真っ暗な暗闇に飛び込んだ。
「グオオオオオオ!!」
「何だ!?あのナメクジ、獣の口の中に入っていったぞ。そこまでこの俺に恐怖をなしたか!ラガス、あの小さい獣ごとナメクジを食い殺せ!!」
「ガアアアア!!」
小男の命令でカラスモンスターが襲い掛かる。だが、俺が口内に侵入したのは森一番
凶暴なモンスター。ルーテル。身体こそ小型だが、自分よりはるかに大きなモンスタ
ーでも積極的に牙を向ける特性があり、契約するのも困難なモンスターだ。
俺は寝ているルーテルとラガスを戦わせることにした。
「ガアアアア!!」
小さなルーテルはラガスに堂々と立ち向かった。
「ガ、ガア!?」
ルーテルは素早い動きと鋭い牙でラガスの片っぽの翼をを食い千切った。
「な、な、何だ、このモンスターは!?」
小男はきが動転しながら飛行能力を失ったラガスと共に落下した。
「グルルルル」
「ひ、ひい!?」
ルーテルは小男にターゲットを向けている。
「俺はこの国の王、ラブドール3世だぞ、分かってるのか!!」
「グ、グオオオ、ギャ、ガy!!」
その時、ルーテルはもがき苦しんだ。
「い、今の内に逃げさせてもらうが、あのナメクジめ覚えておけよ!!」
小男は逃げ去った。そして、ルーテルは俺を吐き出した。もがいていたのは俺が口内
に居たことで不快感を感じていたからだ。
ルーテルが睨みつける。もう逃げる力はない
(ここまでだな…来世はせめてまともな人生を送りたいな…)
その時、真っ赤な光が輝いた。ルーテルは苦しみ声を上げその場から去った。
「随分、弱ってるな。急いで治療をしよう」
女性の声が聞こえた。俺はそこで意識が途絶えた。
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