第二話 盗み

グ~

腹から音がなる。

この身体になってからも食の好みは変わらない。

別に昆虫やコンクリートを食べたりしない。

だが、金は稼げない俺はどうやって食べ物を確保するかというと


「このナメクジ、また食い物盗みやがった!!待て!!」

盗む。

これも街中の人に嫌われる原因だ。でも生きていくに仕方ない。


「くそっ、見た目以上に逃げ足の早い奴だ!」

追いかけて来た店主をよそに裏路地へ逃げる。

俺はそこで盗んだリンゴ一つを味わって食べた。


(旨い。この世界のリンゴは絶品だな…)

後は堂々と食べられれば文句なしだが、それは仕方ない。


「くたばれっ!!気色悪いナメクジめ!!」


「ブオオオオオオ!!」


身体全体が焼ける様に痛い。何か白い粉を吹っ掛けられた。これは間違いない、塩だ。

塩は俺の様なナメクジにとって悪魔の物質だ。


「お前みたいな不快案生き物がいるだけでこの街の人間は迷惑なんだよ!!」


「ギャアアアアアア!!」


身体が縮んでいく。このままでは存在が消えてしまう。

俺は痛む身体を引きずりながら壁を伝い逃げた。


(もう…この街では生きていけない…)


俺は街から外れた森へ逃げることにした。

三十センチ程に縮んでしまい、木陰に隠れ体力が回復するのを待つ。


(もうヤダ。辛い。何故こんな辛い目に合わなきゃいけないんだ…)

生まれてこの方一度も幸せだと思ったことはない。

心身の疲弊と痛みで瞼が重い。このまま眠りに落ち掛けたところ大きな影が覆った。


「ウヒョヒョ~、弱ってるナメクジを発見したぞ~!よし、ラガス、今日はこいつを


いじめるぞ~!!」

おおきな黒い鳥とその上に小男が現れた。

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