第6話「男(ひと)」
20XX年4月17日9時18分。道場。
「孫六さん。櫻蘭さんの様子を見に行ってきてください。」
「はいよ。」
孫六兄さんは道場を出て屋敷の方に向かった。
俺は師匠と話すことになった。
「龍之介さん。『強くなる』と決めたのですよね?」
「はい。」
「あなたの中での強いとは何ですか?」
「・・・。みんなを守るために力をつけることです。」
「そうですね。それはとても立派です。」
「だが、それは不正解です。」
「え?」
「みんなを守るということはできません。櫻蘭さんはあなたを守るために修業をつけてと懇願をしてきました。」
「・・・。」
「孫六さんもあなたを守るために考えました。私もです。」
「・・・。」
「これはとても立派なのですが、もっと考えなければいけないのはあなたの心や身体です。全身あざだらけの男に守られても頼りがないです。」
「強さとは『信じる心』と伝えましたが、『自分を信じる心』でもあります。」
「・・・。」
「櫻蘭さんも、孫六さんも来たときはボロボロで自暴自棄になってたと思います。彼らは彼らなりに変わりました。それもあなたが来てからです。」
「・・・え・・・」
「私も変わりました。この片腕をなくしたころは一匹狼でしたが、あなたや彼らが私の生きる意味。強くなる意味をくれたのです。」
「・・・・。」
「だから、あなたもしっかりと強くなりなさい。修業ばかりではなく休んで遊んで守る意味をもう少し考えてみてください。できますか?」
「はい!」
「それができたら、あなたは強くなりますよ。」
「ありがとうございます。失礼します。」
20XX年4月17日9時32分。櫻蘭の部屋の前。
「櫻蘭、入るぞ。」
「・・・。」
「さっきはすまなかった。やりすぎたと思ってる。」
「・・・。孫六兄さんは悪くないよ。・・・。私が集中してなかったから。」
「・・・。」
「櫻蘭が来た頃を思い出してた。俺は、あの当時はまぁ、野蛮だったし。」
「・・・。」
「まぁ、どうして。今こうなってるかは聞かない。だけど、一つ確認させてくれ。櫻蘭は龍之介のために動いたんだよな??」
「・・・。うん。」
「それならよかった。姉としては立派だったと思うぞ。」
「わたしなんて・・・」
「俺はお前みたいに本当の兄弟はいないが、お前らのことをほんとの兄弟だとおもって接してるんだ。だから、自分のことばかり責めないでくれ。兄は妹を大事に思ってる。」
「・・・。」
「だからさ、お前はこのまま、『優しいお姉ちゃん』でいいんだ。でも、、弟は変わろうとしてるんだ。大好きな姉ちゃんを守るために必死で。」
「それがつらいの・・・。ボロボロで・・・。」
「だな、、、でもな、男(ひと)が変わろうとしてるときにストップをかければそれが後でとんでもないことが起きる。」
「・・・。」
「だから、絶対に止めちゃいけないんだよ。櫻蘭は弟が弱音はいたりしたときに前向きなアドバイスを与えてやってくれ。それができるのは櫻蘭だけだ。」
「・・・。」
この日は、夕食もバラバラにとって静かに眠った。
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