第5話「信じる心」

20XX年4月17日6時01分。屋敷のリビング。


「うん、ちょっとね、心が痛いんだ。」

「龍之介が頑張ってることも知ってる。私たちを守ろうって思ってくれてることを知ってる。でもね、無理はしてほしくないんだ。」

「私は、今まで通りの生意気で優しくてあほで笑顔が素敵な龍之介でいてほしいんだ。」

「ごめんね。忘れて。」


この言葉が頭をループし続けて夜を過ごした。

今朝になったらサク姉はいつも通りだった。

しかし、なにか違和感があった。


「あのさ、師匠。」

「どうしましたか。櫻蘭さん。」

「今日は私に修業をつけてくれませんか??」

「・・・。」

「だめでしょうか??」

「いえ、いいですが。修業は当分しないことになっていませんでしたか?」

「はい、ですが、少しストレス発散もかねてやりたいです。」

「まぁ、櫻蘭さんがいいのであればいいでしょう。」

「師匠。僕も・・・」

「お前はだめだ。龍之介。」

「なんで???!!!」

「昨日の約束を覚えてないのか???」


【あと1時間であなたが我々に触れることができなかった場合は明日は休んでもらいます。】


「確かにその約束ありましたが、僕はもっと速く強くなりたいのです!!」

「・・・。」

「はぁ、、、わかりました。ただし、今日は櫻蘭さんメインで修業をつけます。私や孫六さんが『よし。』というまで動いてもいけません。道場で正座で待ちです。それでもよろしければ道場まで来てください。」

「はい!!」

「師匠はあめえな・・・。」


そういって、道場に4人で向かった。


20XX年4月17日7時11分。道場。


「よろしくお願いします。」


そう、サク姉が言ってから数分経った。

いつもよりもサク姉の殺気は強かった。

だがそれ以上に師匠は落ち着いた顔で修業をつけていた。


「よし、そろそろ。師匠交代しよう。いいな?櫻蘭。」

「はい!!」


何か無茶してる感じの様子だった。

俺がここに来た当時を思い出していた。

何回か師匠と孫六兄さんが交代しながら修業をつけていた。


「おい、櫻蘭!!お前はこんなもんか???!!!」

「うぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」


その次の瞬間だった。

バン!ドン!(櫻蘭の竹刀が折れ、倒れた櫻蘭のほほの近くに孫六が竹刀を差す。)


「サク姉!!」


「「「龍之介!!」」」

思わず立ち上がった俺に対して師匠・孫六兄さん・サク姉は叫んだ。

三人の強者からの殺気に自分は怖気づいた。


「櫻蘭、お前何を考えながら俺と向かっていた。何を思いながら師匠に立ち向かった。」

「・・・。」

「何を目的としてこの時間を過ごしたんだ!!!櫻蘭!!!」

「・・・。」

「孫六さん。もういいでしょう。離してあげましょう。」

「・・・。すまん。櫻蘭。」


そういって、孫六兄さんはサク姉から離れて座った。

それから、サク姉の大粒の涙と泣いた声が道場に響き渡った。


20XX年4月17日8時28分。道場。


サク姉の涙が枯れたころ師匠はこういった。


「それでは、修業を始めますか。龍之介さん。」

「え??でも・・・。」

「やらないのであれば終わりますが??」

「・・・。わかりまs」

「だめです!!!龍之介は休みです!!!」

「サク姉・・・。」


ようやくわかった。なぜサク姉が昨日から様子がおかしいのか。

なぜ、修業つけてなんていったのか。


「ようやく気が付きましたね。」

「まったく、、、そんなことだろうと思ったわ。」

「ごめんなさい。」

「・・・。」

「おまえらはどっちも互いを考えることに必死すぎて自分を見失ってたんだよ。」

「まぁ、よくあることですが・・・」

「櫻蘭の本音を言い出せない心と龍之介の気が付かない心がこれを招いた。」

「・・・。」

「・・・。」

「いいですか?『強さ』とは『信じる心』です。相手のことを信じ、自分の心を信じるがゆえに芽生えることのできるものなのです。お二人は、それがない。」

「ごめんなさい。」の一言だけ言ってサク姉は道場を出て行った。

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