第3話「やさしさ」

20XX年4月16日10時53分。


「孫六兄さん、入るよ?」

「あぁ」


部屋に入ると孫六兄さんは刀匠の衣装で待っていた。


「体の調子はどうだ??」

「特に問題はないかな。」

「それはよかった。」

「ごめんね、心配かけて。」

「あぁ、それはいい。俺らのブラコンが出ているだけだから。」

「ブラコンってww」


それから他愛もない話が続いた。


「そうだ、龍之介はこれ使うか?」

「それって、、、、」

「あぁ。俺の最高傑作のひとつ『大嵐』だ。」

「だめだよ、それは俺が持つべきものではないよ。」

「そういうと思ったさ、、、まぁ、使いたくなったら取りに来てくれ。」

「ありがとう。」

「でも、刀がないと結構つらいだろう。」

「まぁ・・・」

「そしたら、この二本を使うといい。大嵐ほどの出来ではないが…」


そういうと孫六兄さんは、二本の刀を差しだした。

誰も使ったことのない刀たちらしい。


「こっちは、『大御神楽(おおみかぐら)』というひと振りでな。俺がお前の師匠と初めて出会ったときに作り上げた刀でな。新米だったこともありすぐ壊れないとは思うが使ってほしい。こっちは『蒼龍洞(そうりゅうどう)』っていうんだ。こいつはお前と初めて会ったときに作ってた刀だ。この二つはぜひ使ってほしい。」

「いいのか???」

「あぁ、お前さえよければ・・・」

「ありがとう・・・」


「でも受け取れない・・・。」

「?」

「俺の能力が発現をして、この刀を使ってしまったら、家族に・・・」

「危害を加えてしまうかもしれないってか???」

「うん・・・」

「龍之介はとてもやさしい子だな。」


孫六兄さんはずっと俺の方を見て笑っていた。


「でも、それはいらないやさしさだな。」

「え??」

「俺らはな、昨日お前が倒れた時に『何があってもこいつを守る』と三人で誓い合ったんだ。それに俺らは強い」

「でも、、、」

「発現したばかりのお前なんかに負けるような奴じゃねえ。俺らは・・・。」


「でもな、、、龍之介は優しい。優しい奴は強くなる。強くなる素質がある。なんでかわかるか?」

「いや、わからない。」

「優しい奴は誰かを守ろうとするだろう。自分を犠牲にする。それが強くなるための秘訣だ。お前らの師匠も超強いだろう?逆に弱い奴は他人を犠牲にする。お前らの師匠は、お前らのせいにしないだろう?」

「うん」

「あれは大切な人のため。家族のために誰よりも強いんだ。誰よりも優しいんだ。」

「そうか・・・」


結構長く話してから俺は孫六兄さんから二本の刀を受け取った。

誰よりも優しくて、誰よりも強い剣士になると誓った。

師匠みたいに立派な剣士に・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る