第12話「次の鬼」

20XX年4月16日16時46分。鎌倉。


俺たちは、鎌倉の江の島まで由比ヶ浜を通って歩いていた。


「大和、傷はどう?」

「うん、結構引いたよ。痛むは痛むけど。」

「よかった、でもあまり無理はするなよ。ご主人。旅はここからだからな。」

「あぁ、頑張って治るようにするよ。」

「けがが治るまでは私が大和を守るよ。」

「助かるよ・・・。」


20XX年4月16日18時00分。鎌倉。


江の島に着いてから灯台に登って必勝祈願を神社でしてから山を下りていた。

近くの土産物屋で大五郎さんあてのお土産を選んでいた。

すると、ほかの買い物客の話声が聞こえた。


「ねね、知ってる??高尾の酒吞童子の話」

「あぁ、高尾山に住んでるって噂の鬼でしょ?」

「そうそう、また暴れてるらしいよ~」

「怖いなぁ・・・。高尾山ってのが怖いよね。実質隣だもんね。」

「まぁ、でもここまでは来なさそうだけどね。」

「大丈夫だよ。お前さん方・・・。高尾の酒吞童子は根はやさしいから。」

「でも危険ですよ。鬼ですよ??」

「まぁ、確かにこちらが刺激を与えれば攻撃をしてくるさ?」

「こちらが刺激を与えなければ大丈夫なんですか??」

「あたりまえさ。お前さんたちだって誰かに攻撃されたら反撃しようとか思うだろ?それと一緒さ。鬼って呼ばれてるやつらもそうだ。鬼にだって大切な仲間やプライドはあるさ。それを何も知らないやつらに傷つけられたら暴れるさ。」

「なるほど・・・。」




20XX年4月16日19時29分。鎌倉・近江屋。


その場を後にしてから戻ったときに大五郎さんにそのことを聞いてみた。


「あぁ、それは、大山鬼刹(おおやまきさつ)だなきっと・・・。」

「おじいちゃん知ってるんだ・・・。」

「わしらの世代に知らないやつはおらんよ。なんせあの、『童子切』の異名を持つ大室沚利と何年も戦い続けた鬼だからな。結局ちゃんとした決着はつかずに、大山は片目の視力を無くし、大室は隻腕となったという痛み分けで終わった。ちょうどお前さんたちが生まれるちょっと前だな。」

「そうだったのか・・・。」

「そいつがなぜまた暴れてるんだ?」

「さぁ、警察が追ってるのか、観光客が馬鹿にしたかとかだろう。」

「向こうから手を出すことはないの??」

「あぁ、それはめったにないだろうな。大山は普段は温厚だといううわさはあるからな。」

「鬼が温厚ってあまり聞いたことはないけど・・・。」

「そんなに気になるなら、明日にでも高尾に行ってみるといい。」

「え???」

「さすがに危ないよ。けがもしてるし。」

「そういえば、その大山と仲良くなるとなんにでも聞くという噂の秘薬がもらえるそうだ。おまえさんのその傷も癒えるだろう。」

「そうなのか。。。じゃあ、ちょっと興味がわいてきたな。」

「ほんとに行くの?」

「ご主人、『無理は禁物』って言葉を知ってるか?」

「まぁ、お前さんがいきたいというならもう少し情報をまとめたものを図書館に行くといい。大山のことを研究した民俗学の本なら多いからな。」

「確かに。明日にでも行ってみようかな。」

「それなら、私も一緒に行くわ。リリスはどうする?」

「私はネコミュニケーションしておくよ。」

「そうか、それは助かるよ。よろしくな。」


明日は、鎌倉の図書館で高尾の酒吞童子“大山鬼刹”について調べることになった。

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