第7話「雪鬼伝説」

20XX年4月15日10時54分。箱根山岳地帯周辺。


「さてと、箱根には着いたがどこにどうやって向かうんだ??」

「えっとな。ここの道を歩いて行くぞ。」

「え、ここ道??歩き??本当に言ってる??」


そこには、どうみても人の通り道ではない山道があった。一応人は通っていいらしいがどうみても険しい道だなと思った。


「おいおい、お前たちまさかここをみて山道と思ったか?こんなの結構あるあるだろう。ほら行くぞ。」

「それは、おまえら猫にとってはな・・・。」


仕方なく僕らは歩きを始めてだいぶ時間がたった。俺以外はとっても体力があった。

しばらく歩くと小さな山小屋があったのでそこで休憩をしていた。

まだ、凍っている場所もあったからかわからないがやけに寒かった。


「なんかまた、寒くなってきた気がするな。山だから仕方ないのか。」

「まぁ、そうだろうな。あとは・・・。」


リリスは俺の顔を見た後、うつむいてる優姫のほうに顔を向けた。また白髪が多くなった気がする。でも俺はこのことについて触れることは決してできなかった。


20XX年4月15日13時04分。箱根の山小屋。


「さてと、今日はもう少し歩くと開けた場所があるはずだ。そこに、登山者用の宿があるからそこで一泊をするか。」

「おう、そうだな。ここはやけに寒いしな。優姫、立てるか?」

「うん。ありがとう。大和。」


山小屋を出発しようとすると、道が分かれており『雪鬼の墓はここから30m』と立札があった。そちらに行ってみることにした。


20XX年4月15日13時18分。山中。


「なんか、さっきよりも寒くなるのが早い気がするんだが。」

「これは、おそらく死んだ雪鬼の気の力だな。」

「気??そんなことあるのか?墓ってことはあくまで死んでるんだろう??」

「まぁ、、、。まて、、、墓の前に誰かいる。」


リリスが言う通り墓の前には大柄の男が立っており、剣士のようなたたずまいだった。

男は墓を見つめた後に俺らの方に歩いてきた。


「失礼。」


俺らの前を通りすぎた。その男は立ち止まりこういった。


「すまないが、この先の宿まで一緒に来てほしい。迷ってしまった。」


最初は少し警戒をしたが大丈夫だろうという認識になった。


「すいません、僕らこれから墓参りなので少々お待ちください。」

「わかった。」


俺らは墓参りの作法で墓を見ていた。


(ご主人。聞こえてるか?)

(え??リリスこれテレパシー???)

(まぁ、そんな感じだ)

(こんな能力があったのか・・・。それで、どうしたんだ?)

(墓の側面を見てほしい。)


墓石側面のを見ると衝撃を覚えた。なんとそこには15年前に「近江優五郎」「近江姫香」という二人の男女が亡くなって埋葬されていることが分かった。

思わず、俺は優姫のほうに目を向けた。優姫もそれを見つけてしまってるようだった。

優姫は隣にある「箱根雪鬼伝説」と書かれた立札を読んでいた。



【箱根雪鬼伝説】

昔、箱根の山にはその美貌を利用して男性登山客を魅了し、小屋に引き寄せ誘惑していた雪鬼がいた。男は知らない間に自分の体が凍結してしまっていた。

ただある時、雪鬼はある男に惚れてしまった。自分が雪鬼であることを明かして嫌われようとしたが、男もその雪鬼に惚れていた。しばらくして二人は結ばれ娘を宿したが出産とともに雪鬼は高熱を出し手先足先は解け始めていた。男は何とか雪鬼の体を冷やそうと試みるが失敗。手を握り続け冬が来た。男は、雪鬼のそばに居続けたため凍結をして二人は解けてしまった。その後、娘は祖父のもとへ預けられたという。


20XX年4月15日13時26分。雪鬼がまつられる墓の前。


「・・・。大和。私・・・。」

「・・・。優姫は何も悪くない。そして、ここに書かれてることもあくまで伝説だから今日はもう宿に向かおう。リリスもそれでいいよな。」

「おう、私はもう調査は終わる予定だし大丈夫だから歩こうか。」


宿に向かおうとしたタイミングで剣士は振り返った。


「そういえば、俺の名前を紹介していなかった。貂ノ原氷像(てんのはらひょうぞう)という。巷では、『天ノ剣聖』とかいうものの1人である。刀は【大典太】という」


そういって俺らの前を彼はずっと歩いていた。


「ねぇ、大和。」

「どうした?優姫。」

「ごめんなんだけど、大和が嫌でなければ軽く手をつないでもいいかしら。」

「あぁ、大丈夫だよ。」


優姫の手はとても小さくとても震えてもいた。そして冷たかった。


「そんなに握らない方が・・・。」

「うん??大丈夫。もうすぐ宿だから。」


そうやって、僕らは長々な山道を進んでいった。優姫の手を握りながら。

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