第133話 三河ぽんぽこパーク 二
※特に描写する価値もないバトル※
さっさと進みたいのもあって初手全力で
現在は梅雪の目の前で一族総土下座し、『実は他の天狗との争いに負けて故郷を追われて……』みたいな身の上が語られているのだが、梅雪、舌打ちで強制的に黙らせる。
「いいか、二度と、ここに来るな。それが生かして帰す条件だ」
甘い裁定というよりは『早期解決をしたい』『殺すと格が下がりそう』などの理由で見逃すことにした梅雪、そのまま山を降りて狸どもに報告に向かう。
すると狸どもが盛り上がり、祭りの開催をしようとし、気の早い狸が梅雪の周囲で短い手足を振って踊り始めるのを抜刀して散らすという一幕が入った。
何はともあれこれで解決。
サトコに新たな戦力が加わり、これでようやく三河を抜けられる──と、思った矢先であった。
「たぬきはもうだめです……」
次なる
(もう、こいつら全員殺した方が早くないか?)
そういうことを思うものの、さすがに獣人独立国家と戦争になる理由がなさすぎる。
というか戦争になると厄介なのだから、戦争になった時の厄介さで川の上流のトラブルを解決しろよと思わなくもない。
あと流れ的に次の困難も解決しないと話が進まなさそうというのはある。
神格化された狸の妖魔──これは確かに存在する。
まあ、
守護神がなぜ川の上流を支配し守護対象であるはずの狸を困らせるのか、その理由は語られない。
そもそも守護神扱いされてはいたが普通に妖魔なので、妖魔の視点からは『自分を長年封印した連中』として狸どもに被害を与えようとしただけなのかもしれない。
その手段がなぜか川の上流を支配するというものである。確かに困るのかもしれないが、もっとこう、あるだろ、手段。という感じだ。
案の定、
「……もうやれるところまでやってやる」
梅雪は覚悟を決めた。
こうして狸救済活動が始まる……
◆
「たぬきはもうだめです……
倒した結果、レアな金属をもらう。
しかし持ち歩けないので狸にあずけることになった。
◆
「たぬきはもうだめです……狐どもが上流を……」
◆
「たぬきはもう……」
◆
「たぬき……」
◆
「もうドラゴンまで討伐してやったぞォ!」
やけくそであった。
何がやけくそかって、この一連のイベント、全部一日の間に起こったことなのである。
どんな勢いで狙われてるんだよあの上流、という感じだ。
三河に入ったころには昼だったが、今はもう夕刻である。昼から夕刻までで天狗、鬼、狐獣人、野生の狸(獣人ではない)、古代文明の金属兵器、ドラゴンなどを倒した。すさまじい密度であった。
「なんだこの山は!? 何か秘宝でも眠っているのか!? こうも次々に狙われる納得できる理由を示せ!」
「ひいい……た、たぬきはもうだめです……実は……」
という感じで語られたのが、上流の山中に神格化された妖魔狸がおり、それがたびたび困難を呼び寄せる──という話であった。
「祀ってないで倒せ! もうそれは祟り神だろうがァ!」
終わったと思ったら次々イベントが発生するせいで変なテンションになっている梅雪であった。
あと全員、なんだか勢いで倒せてしまうぐらいには弱いのはなんなのだろう。
ドラゴンなんかも空を飛ぶタイプだったのだが、なぜか地上に降りて身の上話などし始める始末。
(この地域は全部ゆるふわにならんといかん呪いでもかかっているのか? 確かにクサナギ大陸は地域ごとに土地神の
たとえば
そういったはっきり目に見える形で影響が顕在化することはそれなりに珍しい。
が、目に見えない、本当に原因かはわからないが、『これは神の影響かもな……』としか思えないことはわりと頻発する。
つまりこの土地の神はファンシーを望まれており、全体的に物事がコメディチックに進みがちなのも神の影響ということ──かもしれないが。
(斬りたくなってくるぞ、神)
心無し梅雪も言動がコミカルになっているような気がする。
リアクションが大きくなってしまっている、というか……
「……まァいい。これで最後だ。妖魔狸を討伐し、サトコにゲットさせ、三河から出る。早く出るぞ。なんとしても出るぞ」
梅雪、これまでに経験のないタイプの真剣さで、川の上流を見つめる。
いちいち山を降りて狸に報告してまた山を登るので、そろそろふくらはぎなどがきつくなってきている。どうせ起こるなら立て続けに起これ、と思う梅雪であった。
そしてわけのわからないなぞなぞを挟んで妖魔狸と戦った結果、サトコは妖魔狸を無事にゲットすることに成功した。
三河ぽんぽこパーク、脱出成功。
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