こんなところで俺の信念が勝ってんじゃあぁねぇよぉぉぉ!!!
「はいとうちゃく〜」
グルグルと目が回り半分放心状態の俺を抱えてゆっくり地面に降りるオネエ天使は天界に到着するやいなや、天使達に矢継ぎ早に指示を出す。
周囲の天使達は量産型天使なのか分からないが、皆同じ白いワンピースを着用しており等間隔で並び立って一つの大きな道を作っている。
「おかえりなさいませ、エルザ様」
「ただいまぁ、何か変わったことは?」
「いえ、特になにも……」
天使は顔をエルザ(一丁前にかっけぇ名前だなぁ……)にむけることなく下を向いて話をしている。
やっぱりこいつって実は偉いのか――?!
さっきはミウちゃんよりも速く飛んでいたし、今もエルザの帰りを待っていたように天使達が足を揃えて頭を下げている。現代社会で言うとお金に物を言わす社長といったところなのかな? というとエルザはここの天界の中でもかなりの重役。役員や社長、あるいは会長なのだろうか?
エルザについて考えていると隊列の中からボイン天使が声をかけてきた。
「お待ちしておりました新垣様」
「お待ちしておりました?」
「はい、ここから下界を見ておりましたし、ミウの目を通して新垣様がここに来ると前々から存じておりましたので既にもう準備は出来ております」
「準備ってなんのことだ?」
「天使になる準備のことでございます。詳しくはまた後ほどお伝え致します」
天使ちゃんはそう言うと俺の斜め前に立ち、隊列で作られた道のど真ん中を歩き始める。「ついて来てください」と言われたが、そう言われる前に俺はもう既に歩き始めていた。
「あのぉ〜……」
「はい、何でしょうか」
「天使になるってどういうことですか?」
俺はここにきてまともな質問をする。
そりゃあいきなり胡散臭い天使が目の前に現れたと思いきやすぐに連れられてこんどは天界に来てしまった。そしてそこで言われたことは「天使になる準備」とかなんとか。
普通に訳が分からない。
「ミウから聞いていないのですか?」
「はい……」
召使いタイプの天使ちゃんは「はぁ……」と俺に聞こえるくらいの大きなためいきを吐く。
「それは……、大変申し訳ございません」
「いやぁ別にアンタを責めてる訳じゃないですよ。ただあまりにも話が急展開すぎて……」
「もう新垣様に天使になる許可は頂いているとミウから申し使っていたのですが」
腰を百二十度曲げて頭を深々とさげる召使いちゃん。
俺は「別に怒っている訳じゃないんだ、だから頭を上げてくれ」と謝罪を辞めさせようとするがそれは逆効果で、更に更に深く頭を下げてしまい二つ折りのベッドのようになってしまった。
「このお詫びは必ず致しますのでどうかここは……」
「だからそんなに怒っているとかじゃなくて――」
「なんでもいたしますので」
「――!!!」
なんでも?
にゃんでも?!
おにゃんでも?!!!!
よくよく見ればこの天使――結構いいバインバインだ。
ミウちゃんに比べれば一歩劣る顔立ちとスタイルだがそれでも並以上。
こんなたまらんバディを俺の好き放題だと――?
そんなもん耐えられる訳ないだろう。
「なんでもというのは……?」
「それは勿論……」
おおっと?
召使いちゃんも満更ではないようだ。
顔を少し赤らめて汗ばんでいる。
目を研ぎ澄ませばお辞儀したときに見える谷間にじわじわとした汗。
「あぁ……、これはきっと……」
「どうされましたがご主人様?」
「いやぁ、何も……」
だがしかし!
ここで手を出すのは童貞の名折れ!
真の童貞は限りなく誠実さやシチュエーションにこだわるべきだ!
「――とりあえず先に案内してくれ」
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
俺の性欲より童貞力が勝ってしまったぁぁぁぁ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます