新キャラがオネエ天使とは俺も予想してなかったんだが?!


「こんばんわ!」

「ひゃい?」

「ひゃいって……、可愛いぃわねぇ!!」


 

 幼いながらもクッキリとした青眼に白銀パーマの青年はギャル天使と同等以上の真っ白な翼を広げて月を背に手を広げて俺を母親のように抱きかかえる。


 先程の垂直落下に加えて、またもや同じような神々しい天使が現れたことに俺は状況の理解が追いつけなかったが、不思議と彼の細くてか弱い腕に安心感をおぼえた。



「あ……、ありがとうございます……」

「いいのよぉ〜!」


 

 オネエ口調というかまんまオネエ。

 俺は一瞬でこの天使の性格が分かった。



「僕ちゃん空は初めて?」

「そりゃあ初めてですけど……」

「あらぁ〜、だったら初体験ってところぉ?」

「意味深な言い方はやめろよ!」

「こら! そんな暴言は吐かないの!」



 俺よりも確実に歳下の顔立ちと体をしているのにも関わらず、謎の抱擁力と大人の余裕を醸し出していた。 

 



「とりま僕ちゃんを安心安全に天界までお届けしまぁ〜す」



 彼は俺を掴んだ直後はゆっくりと上昇していたが急にスピードを上げて月に向かって直進を始める。

 本来の物理法則ならば俺は風の抵抗力で頭が吹き飛ぶほどのスピードなのだが、彼は俺に負担をかけないようにか知らないが片方の翼で俺の体を囲いもう片方の翼を動かして上昇している。



「はぁはぁ……、ねぇー、その子はウチの子なんだけど!」



 ギャル天使は少し置いていかれたが、すぐさまオネエ天使に追いつく。だが追いついたときには息切れを起こしており時間が経つに連れて少しづつ距離が空く。



「あらあら、ミウちゃんの怒り顔も可愛いわぁ〜」

「ウチの子を横取りするのはご法度じゃなかったの?」

「のんのん! それは天界に着いた時の話よ!」


 

 ギャル天使はミウちゃんと言うのか。

 大変可愛くてよろしい。名前に恥じない立派なものをお持ちで素晴らしいと思いますよ。


 

「だったら……、争奪戦よ!」

「望むところ!」



 天使二人は俺を置いてけぼりで争奪戦を始めた。

 ミウちゃんは爆速で進むオネエ天使を追って、速度を上げる。だがそれに合わせて嘲笑いながらオネエ天使も片翼の羽ばたきを強くして速度を上げる。



「ミウちゃんもまだまだ素人だねぇ」



 オネエ天使はそう呟くが既にもうミウちゃんの姿は見えない。


 ミウちゃんは両翼を使って飛んでいたのにも関わらず彼は片方の翼だけで彼女よりも速く飛んでいるので、もしかして彼の方が格上の天使なのだろうか?


 さっきもミウちゃんをまるで子どものように舐めていたので、彼は恐らくミウちゃんの先輩といったところか。


 こんな難癖天使の後輩なんて可哀想に。


 

「よぉ〜し! 僕ちゃん! 一気に月まで行くわよぉ〜!」

「いや、これ以上スピードを――」



 ちなみに俺は限界を迎えていた。


 彼が翼で俺をかばってくれているがそれでも隙間から入ってくる風が弾丸のように俺の体を突いているので結構痛い。

 


「レディ〜……」

「おい! ホントに――」

「ゴォォォ!!!!」



 彼は今日一の低い声と共にロケット発進した。

 


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